127時間 - 映画情報
- 公開:2010/09/12
- 監督:ダニー・ボイル
- 出演者:ジェームズ・フランコ, アンバー・タンブリン, ケイト・マーラ
- 製作国:アメリカ合衆国, イギリス
- 上映時間:1時間34分
MOVIE REVIEWS
127時間という映画をご存じでしょうか?アカデミー賞を総なめにした2008年公開の『スラムドッグ$ミリオネア』の監督、ダニー・ボイルが2010年に公開した映画です。
スタッフも『スラムドッグ$ミリオネア』とほぼ一緒で、再びアカデミー賞にもノミネートされ、ダニー・ボイル監督がまさにノリにノッている頃の映画と言っていいでしょう。
さて、その内容ですが、登山家アーロン・リー・ラルストンの自伝「奇跡の6日間」を原作としたヒューマンドラマです。
つまり、実話をもとにした映画なのですが、簡単に言ってしまえば、岩に腕をはさまれて抜け出せなくなった男が127時間どうしたのかを映画化したものなのです。
実は僕はこの映画の存在をAmazonプライムで知りました。
前回最強の父親で名高いアクション映画『96時間』を観た後に、次は何観ようかなと検索していると似たような名前『127時間』を発見しました。
しかも100件以上のレビューが付いていながら星4以上の高評価。
Amazonプライムビデオの説明文には「それでも生きたい」の八文字のみ。
中身がよくわからないけれど、昨日の今日でこの作品を見つけたのも何かの縁だと思って再生ボタンを押してみると…。
開始早々15分で目を瞑りたくなり、55分には画面を叩き割りそうになり、80分には胸が苦しくなり、90分観終わった頃には大変朗らかな笑みがこぼれていました。
情緒不安定かよって思うぐらい心揺さぶられた映画なのです。
ネタバレそこそこ厳禁的な所がありますが、そんな映画『127時間』のレビューをしていくことにしましょう。
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映画『127時間』 – ストーリー
公開日:2010年09月12日
ジャンル:伝記映画, ヒューマンドラマ映画
監督:ダニー・ボイル
出演:ジェームズ・フランコ, アンバー・タンブリン, ケイト・マーラ
一人でロッククライミングなどをするのが好きだった他人に心を開かないアーロン。金曜の夜いつものように誰にも行き先を告げぬままノリノリでブルー・ジョン・キャニオンに出発する。翌朝、道に迷っていた女性二人を秘密の渓谷へ連れていき一緒に楽しい時間を過ごす。二人はアーロンを気に入り明日のパーティーに誘ったがアーロンは空返事のまま二人と別れキャニオングを楽しんだ。しかし、その最中、岩と共に落下し右腕が岩と壁に挟まれてしまう。助けを呼んでも誰もいない。何をやっても動かない岩。アーロンは持っていたビデオカメラで自分を記録し、初めて自分の人生と向き合うのだった…。
もし、あなたに和食屋で『127時間』ってどんな映画?あらすじは?と聞かれたなら…
この映画は一言で言えば、“実話を元にしたソリッド・シチュエーションなサバイバル”かな。
一つの厳しい状況下に閉じ込められて、そこだけで話が展開していく感じの映画。
この映画のソリッド・シチュエーションは峡谷。
人も通らない、太陽も当たらず夜は寒い。食料もリュックにあるだけ。そして動けない。
持っているものはビデオカメラと、ナイフやロープなどロッククライミングに使いそうなもの。だが右腕が使えない。
主人公のアーロン・ラルストン役は『
スパイダーマン』で親友ハリーを演じたジェームズ・フランコという人。
この映画で一気に有名になったジェームズ・フランコがほぼ一人で話を進めていく感じだね。
アーロンは一人旅が好きで、楽しんでいる自分を記録するビデオと音楽さえあれば良かった。
何度もかかってくる妹からの電話なんて出ないし、週末はひとりでキャニオングするのが楽しくて仕方がない。
今週も金曜の夜から一人でひっそりキャニオングに出発。
自分の第二の故郷と言ってもいいほど熟知している渓谷に二人の女性を発見。
二人はガイド本をたよりにして迷子になっていたが、彼はガイド役をしてあげる事に。
ガイド本にも載っていない秘境につれて行くと二人の女性は興奮マックスで楽しむ。
アーロンはそんな光景をビデオに撮って楽しんだ。
別れ際アーロンをパーティーに誘うが、返事をしつつも颯爽とヘッドホンをつけ、アーロンは去っていく。
狭い所もなんのその、自分の気に入った場所を見つけてはカメラでパシャ。
アーロンは峡谷で大きな岩と共に落下してしまう。
運の悪いことに右腕は岩と壁に潰され身動きが取れない状態に。
左手で持ち上げようとしたり、体当たりをしても動かない。このクソ岩野郎とケリをかましてもびくともしない。
疲れたアーロンはバックからボトルを取り出し水をガブガブ飲む。
その途中で気がつく。水はこれしかない。400mlのボトルの口をしっかり閉め、先ほど出会った二人の女性の名前を力いっぱい叫ぶが、その声は虚しく響くだけだった。
アーロンはバックにあるものを全て目の前に広げ、冷静に手段を考える。
手に取ったのは小さなナイフ。それで岩を何度も何度も何度も削る。左手が疲れても何時間も削り続ける。
岩はほんの少しずつだが削れていく。夜は寒さで眠れず、寝たと思っても5分しか経っていない。
仕方がなく体を温める為岩削りを続ける。朝方に差し込む15分の太陽の光だけが彼を温めてくれる光だった。
彼はビデオを取り出し、今の自分の状況を記録する。
もしこのビデオを観る人がいたなら、母と父に連絡を取って届けて欲しいと。
自分が取った自分のビデオを見て、自分の叫び声に、状況が深刻なことに、絶望する。
徐々に蝕まれていく精神。それでも出来る限り冷静さを失わないように自分に言い聞かせる。
岩が削れる度に右腕に重くのしかかっていく事を。右腕は岩を支えているのだ。
削れば削るほど状況が悪くなっている。アーロンは一大決心をし、右手をナイフで切り落とす事にした。
ロープなどを使って右腕をきつく縛り止血し覚悟を決めてナイフを引く。
…が、ナイフの刃は鈍く、皮膚でさえ傷つけない。
アーロンは中国製のナイフは安くても買わないほうが良いと教訓を得ただけだった。
アーロンはションベンを給水袋に貯めた。最悪の場合、それを飲むのだ。
状況がどんどん悪化し、取れる手段もなくなってしまったアーロンはビデオに向かう事が多くなった。
ビデオに語り、自分の人生を振り返っていく。
家族のこと。電話を無視してしまった妹の事。過去に付き合った彼女の事。自分がいかに自分勝手だったか。
自分を反省しやり直したいと思った瞬間、神がそれを感じたかのように空から大量の雨が降ってくる。
アーロンは何よりもまずボトルを天に差し出し、口を大きく開け雨を飲み込んだ。
…が、状況はそう甘いものではなかった。雨はどんどん激しくなり、アーロンのいる峡谷に雪崩のように流れ込んでくる。
あっという間にアーロンの喉元まで水が浸水し、溺死するかのように見えたが、浮力の力で岩が浮き、右腕が外れる。
間一髪、アーロンはそこから抜け出し、感覚のなくなった右腕をかばいながら車に乗り込む。
助けを求め元カノの家を訪問するが、アーロンが自分の人生を反省した事など知らない彼女は彼を冷たくあしらい…。
正直な所言うとネタバレだなんだって言ったけどさ、タイトルが『127時間』だし、実話を元にしたものだから結果はもう出ているわけだよ。
127時間生き延びた後、息絶えるか、127時間後に救出され助かるか。そのどちらかしか無いと思ったわけ。
んで、1時間30分ていう比較的短い映画だから、その127時間をフルにひとつの状況で使い切ると思っていたわけさ。
でも物語の半分でソリッド・シチュエーションを抜け出しちゃってさ。
まさか人間関係の方に展開していくなんてかなり予想外だったから、お!!こりゃー、他の作品とは違うぞ!って、最初は痛々しい描写で目をつむりたくなるものばかりで正直見ているのも辛かったんだけど、ここまで見てよかったなって。
安いテレビドラマじゃ構わんが、映画じゃ絶対やっちゃいけない事をやって来たから、モニター・ディスプレイを叩き割ったろかー!うきー!!ってなったね。
そこから30分はずっとイライラしっぱなし。
マジでなんだこの映画。マジで!マジで!くそー!!って、画面の前で僕は激おこぷんぷん丸。
しかし、残り10分がなかなかの良い展開にまとまった為、イライラはどこへやら一気にカタルシスが訪れましたとさ。ちゃんちゃん。
映画館で失神者が出たみたいだし、残酷過ぎる描写がダメな人は絶対に観ちゃダメなやつ。キツイ。
僕も何度も観るのやめようと思った。それにラスト10分がなかったらレビューすらする気が起きなかったと思う。
でも、感情の振り幅が大きいから、なんか最後は良いもの観たなーって爽快感すら感じた。
もう一回観るには勇気がいるし、人に勧めるのすらちょっと怖いものがあるけど、自然界の恐怖と人間の不思議さ、強さ、脆さなどなど色々な面を90分という短い時間で垣間見れる作品だと思うね。
やっぱりあれだ。『オープンウォーター』とか、広い目線で言うと『
ソウ』みたいな特殊環境に置かれた人間の極地を扱った映画が好きなら、この映画が好きかもしれない。
『
生きてこそ』って映画も生き残るために死んだ友達食べたりするんだけど、そういう本当に追い込まれた人間が生にしがみつく強さを観たい人向け。
結構こういうジャンルの作品多いけど、この作品はカメラワーク良くて、自然の雄大さをうまく映していると思う。
だからこそ人間は無力で、何も出来ず、そういう状況だからこそちょっとした事にも感謝したくなるっていうのを良く撮れている。
あと危機的な状況にも関わらず写真を撮る事を忘れない主人公の図太さはかなり好感が持てた。
ま、興味が湧いたら調べたりしてみてよ。Wikipediaのこの記事の偉い所は、僕がキレた50分の所に全く触れないでキレイにまとまっている所だね!
この映画、映画批評家の中ではバカウケだったようですぜ。
僕的にはやっぱりあの50分の所さえなければ、手放しでいい作品だ!って思えたんだけどなぁ…。
ま、あくまでも個人的な感想だから観てみて自分で判断くだされ。
…そんな事を『127時間』について割り箸の端と端を持ってキレイに割った事を自慢げに見せながら和食屋で話すと思います。
『127時間』の名言・心をざわつかせた言葉
ムダに飲むな。
取り乱すな。アーロン。気を確かに。
必要なのは20メートルのスタティック・ロープ。太さ9.8ミリ。プーリー3〜4個。カラビナ1箱、スリング1本。電動ドリルにボルトキット。それに引っ張り上げる頑丈な男が8人。それなら助かるのに。
毎朝9時半に、15分間日光が差し込む。気持ちがいい。
教訓。中国製の安い万能ナイフは買うべからず。
母さんは悪くない。完ぺきなクリスマス・プレゼントだったよ。俺がこんな目に遭うとは知らなかったんだから。
母さん、父さん。一緒に過ごした時間は、とてもすばらしかったよ。心の中では本当に感謝してたんだ。
スムージーじゃなくてションベンの味だ。
まだ生きてる。時間はゆっくりだが、胸の鼓動はすごく速い。きっと、いつもの3倍は速い。
すべては俺の今までの人生が招いた結果。
この岩は俺が来るのを待っていた。ずっと宇宙の隕石の時から。何十億年も前から。宇宙で待っていた。
俺の人生は生まれて以来、毎日のあらゆる行動がここへとつながっていた。この大地の裂け目へと。
彼は今も登山と渓谷歩きを続けている。行き先の書いたメモを必ず残して。
『127時間』のおすすめポイント
・開始55分で画面を叩き割りたくなるような演出が待っている事を抜きにしても、最後まで同じ状況にも関わらず飽きずに見せる演出の高さ。
・大自然を感じさせる映像美と、切に迫っている事を感じさせるカメラワーク。
・人間の精神が壊れていく様子と、何とか自身を見失わないようにする様子、そしてどんな状況でも変わらない人間の図太さを観ることが出来る。
映画『127時間』 – まとめ
さて、若干批判的な感情も混じってはいますが、トータルで観てこの映画はどうだったのかと言えば、やっぱりうまい!って感じでしょう。
大した場面展開もなくほぼおなじ状況下の中で90分飽きさせずに魅せるわけですから。
それと会話はほとんど独り言で、主人公の言葉ばかりですが、ひとつひとつがハッとするような言葉が多いです。
文字にして起こすと、あれ?あんまり大したこと言ってないかも?って思いますが、切羽詰まっている状況から生まれてくる言葉なので、重みを感じるんですよね。
結果的に『96時間』から導かれたにしては全く想像していたものと違う映画でしたが、これはこれで僕は嫌いじゃありません。
こういうソリッド・シチュエーション系のホラーはむしろ好きなジャンルですし。アイディアすげーな!って感じで。
ただ、これが想像から生み出されたホラーではなく、実際にあった話となると、途端に日常生活のありがたさ(有難さ)を感じられるのであって、普段何気なく生活しているこの時間もいつなんの前触れもなく手放さなければならなくなる時が来るのかもしれないと思うと、ホラー以上に怖いですね。
だからこそ、そういう状況に陥ってから気がつくのではなく、常に感謝し、大切にしなければ!というありきたりな感想しか述べられない僕なのでした。
ではでは『127時間』でした。
…観る時はそれなりの覚悟の元、御覧くださいませ。
ちなみに、僕が一番印象に残ったシーンはビデオで女性を撮ったシーンを観ながら自慰行為に走る自分を律する所です。
動物は死を感じると子孫を残すためにエロい行為がしたくなるように出来ていますが、生きる為に少しでも水分や栄養を出さないように考え衝動を抑える。
自分のおしっこを飲んでまで生きようとする強い“人間”という部分が勝ったシーンだと思いました。
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127時間 - 感想・評価
公開日:2010年09月12日
ジャンル:伝記映画, ヒューマンドラマ映画
監督:ダニー・ボイル
出演:ジェームズ・フランコ, アンバー・タンブリン, ケイト・マーラ
127時間
-
ストーリー - 45%
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キャラクター - 70%
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演出 - 55%
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映像 - 85%
-
音楽 - 65%
64%
映画レビューまとめ
演出力が高いと述べつつも、あまり点数が上がらなかったのはやはり55分の部分があるから。ストーリーも実話ベースで飛躍するようなものもない為、あまり点数はあがらない。ただし映像の部分が非常に優れているので、頭に残るシーンが多かったり、単調にならずに楽しめる。音楽は可もなく不可もなくだが、最後のラッシュ部分が印象的だったのでちょっとプラスした。点数以上に人の受け取り方によって評価が二分しそうな映画だと思う。気軽に勧められない系の映画。