遠い空の向こうにという映画をご存じでしょうか?『スター・ウォーズ』シリーズのVFXアーティストとして、また『ジュマンジ』などの映画監督として有名なジョー・ジョンストン監督の1999年の作品です。
『ジュマンジ』は僕が人生で初めて映画館で観た映画でして、その映画と同じ監督の作品だということで楽しみにしておりました。
ちなみに『遠い空の向こうに』は伝記映画でして、アメリカの作家ホーマー・ヒッカムの『October Sky』という回想録がもとになっております。
『October Sky』と言われると「10月の空?なんのこっちゃ」と思われるかもしれませんが、アナグラム、つまり文字の入れ替えの言葉遊びでして、「Rocket boys」が最初につけられた回想録の題名なのです。
「Rocket boys」と言われるとちょっと内容が想像出来るようになってきましたよね。ロケットですから、宇宙的な何かです。
実はホーマー・ヒッカムさんは、元NASAの技術者で、最初の日本の宇宙飛行士を訓練した人としても有名なのです。
そんなホーマー・ヒッカムの若かりし頃、高校生4人組でロケットづくりに励む映画『遠い空の向こうに』のレビューをしていきたいと思います。
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映画『遠い空の向こうに』 – ストーリー
公開日:1999年02月19日
ジャンル:伝記映画, ヒューマンドラマ映画, ファミリー映画
監督:ジョー・ジョンストン
出演:ジェイク・ギレンホール, クリス・クーパー, ローラ・ダーン
ネタバレ注意『遠い空の向こうに』のあらすじまとめ
この物語は元NASA技術者であるホーマー・H・ヒッカムJrの実話を元に作られた。
主人公のホーマー・ヒッカムの住むコールウッドはアメリカ、ウエスト・ヴァージニアにある小さな炭鉱だった。主な収入源はその炭鉱から生み出されるもので、住人のほとんどはそこで働くしかない。体育会系の選抜になり奨学金をもらって大学に行くという道も残されてはいたが、そんな道を歩ける高校生は少数だった。
ホーマーの兄はアメフトの才能に長けていて、その数少ない奨学金をもらって大学に行ける生徒ではあったが、ホーマーにはどうやらその才能はないらしい。炭鉱の責任者をやっている父も兄のアメフトの試合には仕事を休んでまで来てくれるほど応援し、炭鉱の仕事を薦めたりはしなかったが、ホーマーには炭鉱で働いてほしいようだ。
何のとりえもないホーマーであったが、そんな彼は運命と出会う。1957年10月。ソ連がアメリカに先だって人工衛星スプートニクを打ち上げた。街中総出で夜空を見つめ、人口衛星が横切っていく姿に見入っていた。ホーマーは心を奪われ、しばらくその場を動けなかった。
次の日から、ホーマーは仲間のロイ・リーとオデールとともにロケットづくりに励んだ。
知識も何もないホーマーたちはとりあえず色々な事を試す。初めてのロケットはロケット花火30個分の火薬を詰め込んだ懐中電灯のロケット。5キロは飛ぶだろうと予想したホーマーだったが、結果は母親が長い間頼んでやっと作ってもらったバラの生け垣を吹っ飛ばしただけだった。
この町ではどうやら人々の関心は上空よりも下界に興味があり、ロケット工学の資料は見つからない。そんなホーマーは自分のクラスメートで彼に関わると世間とはサラバとまで言われている変人クエンティンに話しかける。彼の知識は膨大でロケットやエンジンの事はよく知っていた。
クエンティンの加入により、ロケットボーイズの活動は本格的になった。身近にあるものを加工し、ロケットを作る。それなりに本物らしくなってきたロケットだったが、どうにも燃焼室とノズルの部分の溶接をしなければならない。それにはホーマーの父親が働いている会社の設備を使う必要がある。
ホーマーは父親のいない間に工場に忍び込み、バイコフスキーさんにお願いした。彼は父親に怒られると最初は渋っていたが、彼もスプートニクを観て感動した人間の一人であり、ホーマーの熱意を読み取ると内緒で協力してあげた。
そうやって完成した本格的なロケット。学校でロケットボーイズのみんなに見せている間、校長に見つかり怪訝な顔をされるも、そこへ現れたライリー先生の機転によりなんとか切り抜ける。そして、彼らに科学コンテストの存在を知らせ、そこで優勝すればアメリカ中の大学が奨学金を申し出てくるという事を告げる。炭鉱で働くという未来しかなかったホーマーの心の中に一つの希望が見えてきた。
完成したオーク一号の打ち上げは炭鉱の近くで行われた。天才的業績だと変人クエンティンは自信満々。打ち上げられたロケットは真上に打ちあがったかと思えば、方向を転換し、猛スピードで炭鉱の方へ向かっていった。もう少しで人を殺していたかもしれないと父親に激怒され、こんなクズを二度と会社の地所にまぎれこませるなとくぎをさされてしまう。
しかし、そんなことでは主人公のロケットへの情熱は冷めたりしない。一度の失敗で嫌気がさしていたロケットボーイズの三人は禁止されてしまったこともありやる気をなくしていたが、禁止されたのは会社の地所でやる事であって、13キロ歩けばロケットを飛ばせるという主人公の前向きさに呆れながらも感心し付き合うことにした。
彼らの行動は町の人々に笑われながらも興味を引き、父親も反対しながらもささやかな協力はしてくれた。一方、溶接の協力してくれたバイコフスキーさんは父親にホーマーを手伝った事がバレて、工場勤めから給料がいいが危険な坑内へと飛ばされてしまっていたりもした。
バイコフスキーさんの代わりに溶接の仕事をしていたボールデンさんはホーマーたちのロケットに興味を持ち更なるアドバイスをする。もっと上質な鉄を使えと。その資金を作るため、ロケットボーイズは廃止線になった鉄道の線路をかっぱらいお金を作った。
そしてボールデンさんの知識とともにたくさんのロケットを作り、試行錯誤を繰り返す。点火しては爆発し、そのたびにお金を作る為に重たい線路をかっぱらい、新しいロケットを作って点火してはまっすぐに飛ばずに爆発する。何度も何度も失敗しては失敗から学んでいった。
何度目のロケットだろうか。彼らは今度こそと期待を膨らまし、応援してくれているライリー先生とともに発射場へ着くと、兄が言いふらしたのか、そこには大勢の人がいた。ここで失敗したら大勢の笑いものだ。ドキドキしながらも新しく作ったロケットに点火する…。
ロケットは今までの失敗作とはまるで別物のようにまっすぐ真上に上昇していった。会場は歓喜の声が上がる。
彼らの成功はさらに多くの人を巻き込み多くの人が打ち上げ場に来るようになった。しかし、一方で炭鉱で働いてほしいと思っている父とそうはなりたくないホーマーの溝は悪化していった。兄のアメフトの試合には仕事を休んでも来てくれるのに、ロケット打ち上げの日には決まって仕事が忙しい。
ロケットボーイズの功績はついに新聞にまで出るようになった。
しかし・・・。
その新聞の記事が出たことで、山火事の原因がロケットボーイズのロケットにあると警察に疑われ、逮捕されてしまう。未成年という事ですぐに釈放されたが、上手くいきかけていた歯車は狂い始める。
大雨の日。炭鉱が崩れ多くのけが人が出る。自分を助けてくれたバイコフスキーは死に、ホーマーの父は大けがをする。父が働けなければ収入が入ってこない。兄が働くと提言するが、大学の奨学金がおじゃんになってしまう事を気遣い、ホーマーは自分が学校を中退し炭鉱で働く事に決める。
やがて、父親は怪我から復帰し、ホーマーは学校に戻ることも出来たのだが、そのまま坑内で働く事にした。そんなホーマーをみて、久しく上手くいっていなかった父親は笑顔になり、坑内で自分の仕事を誇らしげに見せた。
俺は炭鉱で働く為に生まれてきた。お前もそうだろう。
このまま炭鉱で働く人生で終わっていいのか。そんな事を考える主人公の耳にイヤな噂が入ってきた。ライリー先生が病気になったというのだ。ホーマーはライリー先生に会いに行った。そこでライリー先生はホーマーに
「時には他人のいう事を聞いてはいけないの。自分の内なる声を聴くの」
と諭す。あなたは炭鉱マンじゃない。別の人生を設計しているはずだと。
その言葉に動かされたホーマーは寝る間を惜しんでロケットの勉強を再開した。働きながらも時間があれば勉強し、そしてついにはあるひとつの方程式を解き、その解を書いた紙を持って夜中にクエンティンの家へ訪問する。
その方程式は、行方不明になっていたロケットの落下場所を示したものだった。その答えを元に山へ行き、ロケットを発見する。山火事があった場所から離れている。火事の原因は僕達じゃなかったんだ。
その証拠を持って学校に行き、校長や警察に自分たちが無実であることを説明した。そして再び学校の生徒として科学コンテストに参加することを認めさせるのだ。
再びロケットボーイズの活動に戻ったホーマー。一時は和解したと思えた父との関係はこのことで再び悪化した。はたして、望んでいることが全く別の方向を向いているこの父と子が和解する時は来るのであろうか・・・。
・・・こんな感じのあらすじです。
父と子の和解は多くの人が経験しうる身近なテーマだと思う
この映画のテーマはまさしく「父と子の和解」だ。決して相手の事が嫌いなわけじゃない。でも、父親が望む事と子供が望むことが違う。そうなるとどうしても二人はぶつかってしまう。
こういうテーマをもろに扱ったものとして志賀直哉の中編小説で『和解』という作品がありますが、あれはいい作品でした。あの小説に通じるものがこの作品にもあります。
炭鉱の町コールウッド。この町は炭鉱によって支えられています。しかし、時代は次第に石炭から石油に移り変わり、炭鉱の閉鎖もうわさされるようになる。リスクに見合わない賃金への不満からストライキも頻繁に起こり、炭鉱の監督者としての父親は首が回らなくなってきている。自分の町を守りたい。だからこそ子供にも自分の仕事を継いでもらいたい。
一方、子供は子供で自分の父親に誇りを持ちつつも、働く人の愚痴なども聞いているし、事故で多くの人が怪我をしたり死んだりしているのも見てしまっている。さらには出来のいい兄とは違い、自分には取り柄がない。それでも親をがっかりさせたくなくて自分にも輝ける場所を必死でつかもうとしているのにその行動が父の意思と上手く相容れない。
このどっちも間違っていない感じなのに、上手くいかない関係性というのが見ていて心をくすぐる。
お互いを理解したいと思っているのに、何かがちょっとだけずれている。
そういう感じが誰しも経験しうる人間関係のむずかしさなのではないでしょうか。
フォン・ブラウン博士は僕のヒーローじゃない
ホーマーはロケットに魅せられてからというもの、アメリカのロケット研究の第一人者であるフォン・ブラウン博士を崇拝していました。そのことを父は知っていました。なので、内緒でホーマーの誕生日にフォン・ブラウン博士のサイン入りの写真を送り、ホーマーはそれを父からのプレゼントとは知らずに部屋に飾り、何かがあればフォン・ブラウン博士に手紙を書いています。
そして科学コンテストに出場後、フォン・ブラウン博士に会ったけれども、そのことに気が付かなかった息子に向かって皮肉ぶってどうだった自分のヒーローにあった感想は。気が付かなかったみたいだが。と言ったことに対して、ホーマーが言う言葉が、もうね熱い。
僕とオヤジはことごとく見解が一致しない。でも僕もひとかどの人物になれるはずだ。オヤジと異なるからじゃない。同じだからだ。同じくらい分からず屋で強情だ。同じくらい良い人間になりたい。
確かにブラウン博士は偉大だが――
僕のヒーローじゃない・・・。
くぅーー!!!熱い!熱いぜ!お互い相手に上手く言葉に表さない所も似てるぜ!にくいねー。お互い愛情を持っているのに、その愛情ゆえにぶつかっちゃう感じね。僕のヒーローはオヤジなんだって言葉にしない所がにくいね!
もうなんか、最後のほうはずっとじわじわ涙が出っぱなしだったよ。そして(´;ω;`)ブワッ。
自分を重ねてみるともうね、なんともいえない映画だ。
映画『遠い空の向こうに』 – まとめ
冒頭に書いた通り「遠い空の向こうに」の原題は「OCTOBER SKY」10月の空って意味ですが、ソ連のスプートニクが打ち上げられたのが10月という意味もあります。「Rocket boys」のアナグラム、Rocket boysを入れ替えるとOctober skyになるっていうのとかけてね。
おっしゃれー!くぅーー!!たまらん!
なお、僕的に嬉しかったのは前にこのサイトでも高評価した『ドニー・ダーコ』の主人公役を演じたジェイク・ギレンホールの初主演作品がこの映画だったってことです。
やっぱ、彼はいいな。なんとなくいいあぐねる感じの演技が最高です。
この映画は完全に泣かせまっせっていう演出が存在しないのが良いです。アルマゲドンとかはほらここで泣きなさいっていう明確なシーンがあるけれど、この映画はなんかどこで泣けるのかわからないけど、気が付けばずっとジンジンしているよーっていう涙の出方でした。
あざとくないのがいいね。
なので、過去に一度は親と上手くいかなかったことがあったりするあなたはこの映画『遠い空の向こうに』が結構オススメです。ストーリー的に地味だけど素敵だよ。これがまた実話なところがね。
人の人生とはやっぱり映画のようなものなのだな。
ではでは、今回はこんな感じで。
あ、ライリー先生の魅力もたっぷりでした。こういう先生に出会えると人生大きく変わるよなぁー。
遠い空の向こうに - 感想・評価
公開日:1999年02月19日
ジャンル:伝記映画, ヒューマンドラマ映画, ファミリー映画
監督:ジョー・ジョンストン
出演:ジェイク・ギレンホール, クリス・クーパー, ローラ・ダーン