硫黄島からの手紙_クリント・イーストウッド
硫黄島からの手紙 - 映画情報
  • 公開:2006/12/09
  • 監督:クリント・イーストウッド
  • 出演者:渡辺謙, 二宮和也, 伊原剛志
  • 製作国:アメリカ合衆国
  • 上映時間:2時間21分
MOVIE REVIEWS

硫黄島からの手紙という映画をご存じでしょうか?クリント・イーストウッド監督が2006年に発表した戦争映画で、渡辺謙や二宮和也が出ています。

前回レビューした『父親たちの星条旗』と対になっている映画で、太平洋戦争中の硫黄島の戦いを日本側視点で描いた作品なのですが、アメリカ贔屓を全く感じさせない出来に感動すら覚えました。

なぜこれが日本人ではない監督に作れるのか…。

正直『父親たちの星条旗』は精神的にかなりまいったので、連続の戦争映画はキツイと思っていました。

しかし、『硫黄島からの手紙』の方は比較的内容も理解しやすく、同じ監督とは思えないほど全く違う雰囲気で作られていたので、すんなり観ることが出来ました。

ちなみに製作国がアメリカ合衆国なのでこのブログでは洋画に分類しましたが、ほぼ日本人キャスト、ほぼ日本語で展開されます。

ということで、映画『硫黄島からの手紙』のレビューをしていくことにしましょう。

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映画『硫黄島からの手紙』 – ストーリー

硫黄島からの手紙
4.1

公開日:2006年12月09日
ジャンル:アクション映画, 冒険映画, ヒューマンドラマ映画, 歴史映画, 戦争映画
監督:クリント・イーストウッド
出演:渡辺謙, 二宮和也, 伊原剛志

2006年に硫黄島の地中から発見された数百通もの手紙。そこには硫黄島の戦いで散っていった兵士たちが家族に向けて書いた思いが綴ってあった。決して届くことのなかった手紙。彼らは一体どんな思いで戦っていたのか…

もし、あなたにうどん屋で『硫黄島からの手紙』ってどんな映画?あらすじとか評判は?と聞かれたなら…

野口明人
野口明人
この映画は一言で言えば、“日本側から観た硫黄島の戦いの記録”なんだ。
ちぐのさん
ちぐのさん
クリント・イーストウッド監督の硫黄島プロジェクトの片割れね。
野口明人
野口明人
『父親たちの星条旗』がアメリカから見た硫黄島の戦いの映画。
ちぐのさん
ちぐのさん
『父親たちの星条旗』の方はどちらかというと時間軸がバラバラで戦争だったり現在だったり行ったり来たりで、ちょっと内容が捉えにくい部分があったけど、この映画はほぼ全編が硫黄島での戦いの事を描いているから分かりやすい。
野口明人
野口明人
嵐の二宮和也演じる西郷昇陸軍一等兵と渡辺謙演じる栗林忠道陸軍中将などが家族に書いた、届くことはなかった手紙が後に発見されて、それを元に作ったって感じ。
ちぐのさん
ちぐのさん
西郷は実在しないけど、栗林忠道陸軍中将は実在した人物で、硫黄島での戦いで指揮を取っていたボス的立場の人なんだね。
野口明人
野口明人
他にも中村獅童とか加瀬亮とか存在感がある日本の俳優さんが沢山出てるんだけど、洋画って所が不思議だよなー。
ちぐのさん
ちぐのさん
『ラストサムライ』も日本人が日本語で演技するけど洋画なんだってのはあったけど、あっちはトム・クルーズが主演だったのに対して、こっちは完全に日本人が主役だもんな。
野口明人
野口明人
クリント・イーストウッド、日本語喋れないのに監督するとか、すげー。
ちぐのさん
ちぐのさん
ニノはクリント・イーストウッドが日本語通じないのを良いことに、タメ語で文句言ったりいじったりしたらしいけど、クランクアップ後にサインもらいに言ったら、「お前は嫌だ」って冗談いわれたらしいよ。
野口明人
野口明人
やっぱり雰囲気は伝わるんだね(笑)
ちぐのさん
ちぐのさん
まぁあれだ。前作は観終わった後にかなり精神やられたんだけど、日本人が演じてるっていうのと、演じてる人が今でも普通にテレビで活躍している姿を観られるっていうのがあるから、前作よりかは“作品”として観ることが出来たね。
野口明人
野口明人
それでもかなりショッキングな描写とかあるから、間違いなく戦争の雰囲気はズシズシ伝わってくる。
ちぐのさん
ちぐのさん
戦争の悲惨さとか、日本がまだ大日本帝国だった頃の統治の仕方だったり、天皇陛下万歳と言いながら散っていく姿とか、敵に殺されるような恥を晒すなら玉砕せよと、手榴弾自殺するシーンとか。
野口明人
野口明人
大和魂という形で表現されているけど、やっぱりそれでも兵士たちは「本当は死にたくない、死ぬことを簡単には割り切れない」という姿を見て胸が苦しくなる。
ちぐのさん
ちぐのさん
この映画のすごい所は、クリント・イーストウッドが撮ったというのに日本人を変なイメージで捉えず、兵士たちの思いは日本もアメリカも一緒だったというテーマで描いている所だと思う。
野口明人
野口明人
お国のためといいつつ、戦場で戦っている兵士はそれぞれ国や天皇陛下という意識よりも自分を産んでくれた母親や、奥さん、子供を思って戦っていたという描写が強い。
ちぐのさん
ちぐのさん
それを栗林中将の手紙を読んだ時に感じ取ったクリント・イーストウッドは、本来日本人がやる予定だった監督を、私にも出来るかもしれないと引き受けたわけだね。
野口明人
野口明人
日本が登場する外国映画って結構多いけど、侍や忍者のイメージを現代に当てはめて、刀、チャンバラを無理矢理ねじ込んできたり、漢字がかっこいい意識で、これって日本っていうより中国みたいな街になっちゃってるじゃんっていうのばっかり。
ちぐのさん
ちぐのさん
だからこの映画もそういう日本人が感じる外国人が作り出す“日本”の違和感みたいなのあるのかなーって思ったけど、マジで全くない。
野口明人
野口明人
日本人の監督が作ったって言ってもいいぐらい“日本”をちゃんと表現してくれている。
ちぐのさん
ちぐのさん
そして日本人の監督が撮るよりも、より強く“日本”に尊敬の念を込めて作ってくれている感じがする。
野口明人
野口明人
前回も思ったけど、クリント・イーストウッドは“アメリカ人”を比較的嫌悪感を持たせるような撮り方をしていると思うんだ。
ちぐのさん
ちぐのさん
アメリカ万歳な映画が多いのに、クリント・イーストウッドは“アメリカ人”という人種に疑問符を投げかけるような撮り方をするの。
野口明人
野口明人
その上、“日本人”は日本人が観た時にガッカリされないような礼を尽くして撮ってくれている。
ちぐのさん
ちぐのさん
この監督の客観的視野、本当にすごいわ。ステレオタイプを省いて物事を捉えられるのかね。
野口明人
野口明人
それと前回ちょっと文句をつけたCGについて、作り物感がなんだと言ったけど、今回の映画に『父親たちの星条旗』で使ったCGを流用していたにも関わらず美しさを感じたのはなんでだろ。
ちぐのさん
ちぐのさん
映像から伝わってくる硫黄島の美しさみたいなのもあったんだよね…。
野口明人
野口明人
今回は硫黄島の撮影許可もおりたみたいで、所々に使われているからかね。
ちぐのさん
ちぐのさん
あと、全体を通した映像の色合いね。
野口明人
野口明人
戦争映画って比較的暗いカラーの映像を使うじゃない。でも本当の戦争の時ってセピア色になってたりグレートーンやモノクロになっていたりせず、僕らが今生きている時に見るように、晴れた日には空は青かったはず。
ちぐのさん
ちぐのさん
ただ映画の中になると重々しさを感じさせるように、兵士たちが汗だくになるぐらい晴れていても暗い空だったりする。
野口明人
野口明人
この映画でも状況によって色合いが変わるんだけど、印象的なものだけは画面全体で色を変えず、その“物”だけがくっきり現実的な色を放っているんだよ。
ちぐのさん
ちぐのさん
例えば硫黄島のミドリだったり、太陽のオレンジだったり。それがね、美しさを醸し出していると思うんだ。
野口明人
野口明人
ま、感想はほどほどにあらすじの話をしよう。…と言ってもほぼ概要的なものしか話せないんだけど。
ちぐのさん
ちぐのさん
戦況はもうほぼ日本が敗戦間近な時期。
野口明人
野口明人
アメリカは日本の首都に近い硫黄島を拠点にし、そこから総攻撃を仕掛ける為にどうしても硫黄島が欲しかった。
ちぐのさん
ちぐのさん
日本としてはそれだけは絶対に阻止をしなければならないのだけれど戦力もない。そこに派遣された栗林中将。
野口明人
野口明人
彼はアメリカに行った事があり、そこで友好の証としてピストルをもらった過去がある。
ちぐのさん
ちぐのさん
日本はアメリカと絶対、戦うべきじゃない。日本はアメリカと友好的な関係を結ぶべきだという意見を持ち、アメリカの社交界にも参加し、交友を深めていた。
野口明人
野口明人
しかし、そこで軍人の奥さんに「もし戦争になったらどうするんです?」と質問されると栗林中将はこう答える。
ちぐのさん
ちぐのさん
「絶対にそんな事はあり得ませんが、もしそうなったら国のために務めを果たす」と。
野口明人
野口明人
「夫を撃つということ?」「信念に従う」「君の信念?それとも国の信念?」「同じことでは?」という会話をし、彼は真の軍人だと賞賛されていた。
ちぐのさん
ちぐのさん
だが、実際に絶対に起こって欲しくなかったアメリカとの戦争。硫黄島で指揮を執らなければならなくなった。
野口明人
野口明人
硫黄島にはすでにアメリカとの戦いに備えて兵士達が過酷な状況下の中準備をしていた。
ちぐのさん
ちぐのさん
それをみた栗林中将はこんな事では守れない。今すぐに辞めて別の作戦で行こうと指示する。
野口明人
野口明人
それを聞いた現場の指揮官達は栗林中将に反感を持つ。「アメリカの腰巾着めが」と。
ちぐのさん
ちぐのさん
しかし実際は硫黄島で準備をしていたものたちには戦況が伝えられておらず、援軍ありきな準備をしていた為、栗林中将の指示がなければ、もっと早くに全滅していただろう。
野口明人
野口明人
現場の指揮官達は“鬼畜米兵”という言葉だけを刷り込まれたアメリカを知らない日本人たちなのだ。
ちぐのさん
ちぐのさん
指揮官達は不満を抱えながら現場の兵士たちに指示を与える。
野口明人
野口明人
そこに妻とまだ生まれて間もない顔さえ見ていない娘を残して出兵してきた元パン屋の西郷は文句をたれ、非国民だと折檻されてしまう。
ちぐのさん
ちぐのさん
その光景をみた栗林中将は、代わりになる兵力を持っているのかと止めに入る。
野口明人
野口明人
助けてもらった西郷はあの人は出来た人だと好意を持つ。
ちぐのさん
ちぐのさん
その後、アメリカ軍が攻めてきて、海岸から迫ってくる。
野口明人
野口明人
しかし栗林中将は攻撃の合図を出さない。その事にも不満を募らせる現場指揮官達。
ちぐのさん
ちぐのさん
迫りくるアメリカ軍隊。
野口明人
野口明人
頃合いを見計らって、やっとの事で攻撃の合図を出す。じわりじわりと日本軍の兵隊を削っていく。
ちぐのさん
ちぐのさん
西郷のいた部隊もほぼ壊滅状態。
野口明人
野口明人
指示を聞きに西郷は現場の指揮官の場所へ走る。
ちぐのさん
ちぐのさん
無線で栗林中将が他の部隊と合流しろと指示を出すが、現場の指揮官達はもう玉砕しかないと栗林中将の指示を無視して兵士へ手榴弾で自爆することを指示する。
野口明人
野口明人
次々と死んでいく兵士。
ちぐのさん
ちぐのさん
現場指揮官も自爆し、憲兵隊から派遣された兵士と西郷だけが残る。
野口明人
野口明人
西郷は逃げ出すが、憲兵は西郷に向かってピストルを突きつける。
ちぐのさん
ちぐのさん
「俺は聞いたんだ。栗林中将が玉砕はするな。他の舞台へ合流しろと。ここでこのまま死ぬのと生きて戦い続けることとどっちが陛下の御為になる。あ?どっちだよー!」
野口明人
野口明人
西郷の凄みに憲兵は怯む。憲兵は考えを変え、西郷と共に他の部隊へ合流する。
ちぐのさん
ちぐのさん
しかし、合流した先の現場指揮官は逃げてきた西郷達を非国民だと罵り、刀で斬りかかる。
野口明人
野口明人
そこに現れる栗林中将。またしても助けられた。
ちぐのさん
ちぐのさん
西郷は生き延びる為に色んな策を練り、それをみていた憲兵は卑怯者だと罵るが、その足は震えている。
野口明人
野口明人
合流しては部隊が壊滅し、合流しては壊滅する。しかし西郷は生き延びるためならなんでもする。
ちぐのさん
ちぐのさん
栗林中将と仲の良かった元オリンピック選手が指揮官を務める部隊に合流した時、負傷したアメリカ兵を指揮官が手当をしてやれと言い、アメリカ兵と話す時があった。
野口明人
野口明人
彼は手当も虚しく息絶えてしまうが、彼が持っていた母親の手紙は、日本兵のみなが思い描く鬼畜米兵ではなく、普通の愛する子供にあてた手紙だった。
ちぐのさん
ちぐのさん
日本人もアメリカ人も一緒なのだ。
野口明人
野口明人
一度もアメリカへ行った事がない日本兵。
ちぐのさん
ちぐのさん
鬼畜米兵、アメリカ兵はヘタレだと言い聞かされ続けてきた彼らには、その手紙は衝撃だった。
野口明人
野口明人
正義とはなんだ。一体何のために戦っているのか。憲兵はこんな所で死にたくないと西郷にもらす。一緒に投降しよう…。
ちぐのさん
ちぐのさん
…とまぁ、ネタバレしない程度にあらすじを言ったけど、あらすじじゃ伝えられない内容だから実際に観て確かめてみて。
野口明人
野口明人
アメリカ軍の鬼畜さとか、その他もろもろ描かれてるから。
ちぐのさん
ちぐのさん
僕はどちらか先に観ろというなら『父親たちの星条旗』より『硫黄島からの手紙』の方がすんなり受け止められるんじゃないかなって思うよ。
野口明人
野口明人
ま、興味が湧いたら栗林忠道の事も調べるとより深く考えられるんじゃないかな。

…そんな事を『硫黄島からの手紙』についてかき揚げの天ぷらをかじりながらうどん屋で話すと思います。

『硫黄島からの手紙』の名言・心をざわつかせた言葉

戦争のため?お国のため?なんでパンなんだよ。

いいか今から言うことは誰にも言っちゃいけないぞ。いいな。父ちゃんは生きて返ってくるからな。

我々の子供らが日本で一日でも長く安泰に暮らせるなら、我々がこの島を守る一日には意味があるんです!

ここでこのまま死ぬのと生きて戦い続けることとどっちが陛下の御為になる。あ?どっちだよー!

向こうで落ち合おう。もし会えなければ、来世で会おう。

「固まって歩くな。そこを狙われる。少し距離を置け」「卑怯者が」「死んだ兵隊はな役に立たねーんだよ!」

鬼畜米兵という言葉を俺は鵜呑みにしていた。だがあの米兵、あいつの母親の文面は私の母のと同じだった。私は閣下のため、お国のために任務を全うしたい。だが無駄死にはしたくない。

不思議なもんだな。家族のために死ぬまでここで戦い抜くと誓ったのに、家族がいるから死ぬことをためらう自分がいる。

『硫黄島からの手紙』は↓こんな作品や世界観が好きなあなたにおすすめ。この映画を観ている時にパッと思い浮かんだ映画・小説・漫画・アニメ・テレビドラマ、または音楽など

永遠の0
4.5

著者:百田尚樹
出版:太田出版
ページ数:489ページ

ちぐのさん
ちぐのさん
この映画を観た時に真っ先に浮かんだのがこの小説『永遠の0』。分厚い部類に入ると思いますが一晩で読んでしまった事を思い出します。

映画『硫黄島からの手紙』 – まとめ

二日続けて戦争映画。次回はもうちょっとほんわかとしたハッピーな映画がいいなーとは思いますが、『硫黄島からの手紙』観てよかった。

クリント・イーストウッドの映画でここまで、おおお!!ってなったのも久しぶりです。

本当になぜこんな映画が作れるのだと感動すら覚えました。この映画をアメリカ人が作った事に価値があると思います。

昨日は戦争は善や悪ではないと叩きのめされましたが、戦争の中に垣間見える善と悪が平等な視点で描かれていました。

犬を撃ち殺せない憲兵。犬を撃ち殺す憲兵。一日見張りをするのが面倒くさいという理由で捕虜を撃ち殺す兵隊。人を刺し殺す影を見てハッとする兵士。

前回の作品同様に、心に刺さるシーンがたくさん散りばめられています。

ただ単に残酷な殺し合いを見せるだけではなく、直接的に映像で写すのではなく、時には映さない事で伝える戦争の残酷さ。異常さ。その演出が本当にすげーなーと思った今日なのでした。

ではでは『硫黄島からの手紙』でした。

影を見てハッとするシーンは僕がこの映画で一番印象に残ったシーンなので、是非この映画を観た時は捜してみてください。

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硫黄島からの手紙 - 感想・評価

硫黄島からの手紙
4.1

公開日:2006年12月09日
ジャンル:アクション映画, 冒険映画, ヒューマンドラマ映画, 歴史映画, 戦争映画
監督:クリント・イーストウッド
出演:渡辺謙, 二宮和也, 伊原剛志

硫黄島からの手紙
  • ストーリー - 80%
    80%
  • キャラクター - 90%
    90%
  • 演出 - 95%
    95%
  • 映像 - 90%
    90%
  • 音楽 - 65%
    65%
84%

映画レビューまとめ

何度も何度も繰り返しますが、この映画を撮ったのはアメリカ人なのかよ!と驚く出来だと思います。そして前回の作品に比べて映像を使った演出も多く、心を揺さぶってきます。僕が今まで観た戦争映画の中では一番友達に勧めたくなる作品でした。

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硫黄島からの手紙_クリント・イーストウッド
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