- 公開:2010/09/17
- 監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
- 出演者:ルブナ・アザバル, メリッサ・デゾルモー=プーラン, マキシム・ゴーデット
- 製作国:カナダ
- 上映時間:2時間11分
灼熱の魂という映画をご存じでしょうか。2010年のカナダの映画です。
監督はドゥニ・ヴィルヌーヴ。下唇がずるむけそうな名前ですが、SF映画『メッセージ』で有名な監督です。
『灼熱の魂』は前回観た『未来を生きる君たちへ』とアカデミー賞外国語映画部門を争った映画で、様々な映画サイトでも非常に高評価の映画でした。
僕はこの映画を『未来を生きる君たちへ』のレビューの中で発見し、ちょうど無料で観る事が出来たので、続けて観てみることにしたのですが、個人的には『灼熱の魂』の方が好みでした。
観終わった瞬間、すげーストーリーだな!とひとつ声を上げた後に放心してしまったほどです。
原題は『Incendies』で「火事」という意味。
1975年~1990年に起こったレバノン内戦を取り扱った非常に重苦しい内容でしたが、子供の頃にニュースで流れてたぐらいの知識しかない僕でも惹き込まれるストーリー展開でした。
これは俗に言う戦争映画ではなく、戦争を背景に展開していくミステリー映画なのです。
それでいて、戦争の悲惨さと恐怖をマジマジと感じ取れる不思議な構成。
ということで、映画『灼熱の魂』についてレビューをしていくことにしましょう。
スポンサードリンク
映画『灼熱の魂』 – あらすじ
公開日:2010年9月17日
ジャンル:ヒューマンドラマ映画, ミステリー映画, 戦争映画
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
主演:ルブナ・アザバル, メリッサ・デゾルモー=プーラン, マキシム・ゴーデット
映画名作レビュー戦記シネマネオン!-灼熱の魂の巻-
館見放題
とある映画館でポスター貼りのアルバイトをしていた館見 放題(たちみ ゆきみつ)。「一旦CMでーす」と言いながら映画ランキングと興行収入を参考におすすめポスターを入れ替えていたが、その作業中、謎の組織ノーモアーズに襲われ記憶と顔を盗まれてしまう。何も思い出せない館見。彼は自分を取り戻すため、引き込まれるように映画館に入り『灼熱の魂』を観ようとしたのだが…
映画『灼熱の魂』 -内容紹介-
映画『灼熱の魂』 -解説-
それは混沌としており、過剰に長く、メロドラマ風だが、それらの欠点は『灼熱の魂』の印象強い演技と破壊的でエモーショナルな衝撃の前には色褪せてしまう
映画『灼熱の魂』の批評を終えて
映画『灼熱の魂』の名言・心をざわつかせた言葉
遺言で作り話をする人はいない。
避けられぬものに抵抗してはいけない。
守るものがいないと思想は絶える。
我々の敵を憎むからって、お前が我々の味方とは限らない
叔父は言葉と書物が平和を築くと信じてた。私もそうだった。でも現実を思い知った。
時として知らないほうがいいこともある。
“死”で物語は終わらない。常に痕跡を残す。
約束する。公証人にとって約束は神聖なものだ。
長い年月の間、各派の無情な論理によって報復の連鎖がふくらみ続けたのだ。足し算のように。戦闘を指揮する男は記憶力が抜群だ。必ず覚えているとも。
人は真実を前に沈黙する
動画視聴で『灼熱の魂』を実況・解説!
- 0:03:10頃
な、なんだこの始まりは!?丸坊主にされている少年がずっとこっち見てくる! - 0:08:10頃
誰もがうなずいたと思う。そのとおり。変わった遺言ですね! - 0:18:05頃
…怖っ。ママの目が死んでいる。ここから回想に入るのか。 - 0:19:40頃
あれ!?さっきの双子って映画のタイトルが出てきたのだと思ったら違うのか。章題みたいなもんか。今度はナワルだ。 - 0:22:10頃
深刻なシーンなはずなのに、おばあちゃんがあまりにキーキー喋るせいでわらってしまう。窓閉めたはずなのに、開いてるし。 - 0:28:30頃
今度はダレシュだ。これなんなんだろう。 - 0:45:55頃
なんか段々、このお母さんが高嶋ちさ子に見えてきた。 - 0:48:45頃
えー!!突然撃ってきた! - 0:51:45頃
宗教とは一体何なのか…。 - 0:52:05頃
うぉ…。このシーンは凄惨過ぎる。 - 0:53:15頃
久しぶりにBGMかかったな。 - 0:57:45頃
言葉がわからない環境にいる時、ほんとこういう感じ。とりあえず笑っとけってなる。そんな時に言葉がわかる人が現れたら、そりゃー安心した顔になるよね。 - 0:58:40頃
あれ?ワハブさんって銃で撃たれて殺されてなかったっけ? - 1:00:50頃
今度はデレッサだ。 - 1:09:10頃
壮絶な人生だな…。 - 1:15:00頃
なんかちょくちょく言っている事が字幕にならないのは別の言語を挟んでいるのかな?フランス語と別の言葉の響きの違いがわからない…。 - 1:17:00頃
考えてみれば、ここまでほぼシモンは登場してこないな。 - 1:20:00頃
あ、やっとシモン出てきた。 - 1:25:00頃
なんてこった。本当にお腹が大きくなっている。 - 1:26:40頃
え…。二人目。 - 1:33:00頃
ちょくちょくプールのシーンが出てくるな。 - 1:40:00頃
この公証人の人、神聖だ神聖だって言っているけど、弟くんとの約束破ってるじゃないか。 - 1:41:15頃
弟くんの今の表情いいな。そして姉のあなたの番よという決め顔がいい! - 1:43:15頃
弟くんがこの映画の中で初めて笑ったな。本当になんてことないシーンで。なんか安心する。 - 1:55:15頃
あまりに衝撃過ぎて、今の反応も納得できてしまう。 - 1:57:45頃
ママの死んだ目がここにつながってくるのか!理由がわかってスッキリした。
映画『灼熱の魂』 – オチ・エンディング・ラストの感想・考察
ここから先はネタバレを含む場合がございます。まだこの作品を観ていないあなたはこのままページを閉じるか、覚悟の上でお読みください。
by シネマネオン
ここから
- クリックしてネタバレを表示
-
この映画、意図したミスリードじゃないとは思うんだけど、よく注意して観ていないと双子目線でストーリーを追ってしまうんだよな。あ、さっきのあらすじの続き?そう。ナワルが拷問されて、レ△プされて監獄で子供を産んだというシーンがあるんだ。…戦争中だろうが、許される事ではないぞ!それ!もうすでに観客は最初の方でナワルが子供を産んだのを知っているはずなのに、双子の目線では、兄が監獄で生まれたって言っているから、あ、そうなのか!って感じになってしまう。これが意図していないミスリード。ん?あー、双子は母が子供を探していたのとか知らないんだもんね。兄と父を少ない情報から探してるわけだから、子供が産まれたと聞いたら兄の方だと思うのも仕方がない。結果的に二人は自分たちの出生の秘密を知るわけだけれど、でもここがこの映画のクライマックスではないのです。うん。まだ父と兄が出てきていないし。実はだね、双子は拷問していた男が自分たちの父親だと知った後、その男がナワルの探していた子供だったと知るのですよ。え!?今なんて?双子の姉は父親への手紙を託されて、弟は兄への手紙を託されていたのだけれど、結局は同じ人に渡す事になるのさ。そうなると息子に母親はレ△プされた事になるのか。そんな話をどこかで聞いた事はないかい?うーむ。確か昔読んだ小説にそんな感じのやつがあったような気がするんだけど、なんだっけな。古代ギリシャ三大悲劇詩人のソポクレスが書いた『オイディプス王』さ。あ!占い師の言葉によって自分の子供を捨てたら、その子供に復讐されたやつか!正しくはこうだ。時の王ライオスはアポロンの神託により、自分がやがて生まれる子供の手にかかって殺される事を告げられる。太古のギリシャの話なんだよね。それを恐れたライオスは妻のイオカステとの間に子供が生まれるとすぐに山の深くで殺してくるように命じる。昔の人は占い師の言うことを真に受け過ぎだよね。十数年後、ライオスは再びアポロンの神託を聞くために旅に出たがその道中で殺害されてしまう。しかも王を失った国はさらなる苦悩を強いられる。たしかあれだよね。スフィンクスが襲いかかってくるんだよね。そう。解き難いクイズを出して、答えられない国民から命を奪いさっていくんだ。昔の世はやっぱり不幸につけこんで行くフシがあるよね。そこへ放浪の旅を続けていたオイディプスがやってくる。彼は秀でた知性によりスフィンクスの謎を解き国を救う。そして人々に推されライオスの後をついで国の王になるんだ。そうだったそうだった。そしてライオスの元妻、イオカステはオイディプス王の妻となり、平和で幸福な10数年の歳月の間に4人の子供を生む。しかし国に再び災難がふりかかり、オイディプス王はアポロンに神託を聞く。この物語で一番悪いやつってアポロンの神託なんじゃないのか?って思う。この国にはひとつの汚れが巣くっている。国をゆるがしている嵐の原因は、流された血にあり。血をもって血をつぐなえと。あー、それでライオス王の殺害犯を探しまわるけど、結局それがオイディプス本人だと知り、母と交わって子を産んでいた事を知ってショックを受けた王は自分の目を潰して王位を退くっていう悲劇だったね。そう。この物語はオイディプス王目線で悲劇を取り扱ったけど、いわば母であるイオカステ目線で展開したのが今回の映画『灼熱の魂』ってわけさ。なるほどなぁ〜。この映画のラストの方で、ナワルは怒りの連鎖が断たれたと手紙に書いている。息子への愛によって。息子が生まれた時にどんな事があっても息子を愛し続けると約束した。うぅぅ…。その子供とはレバノン内戦のために離れ離れになってしまったし、レバノン内戦は報復の連鎖の戦争だったけれど、ナワルは子供への愛によって報復する事を辞めた。すごい話だなぁ。回想シーンがプールから始まったって言ったけど、ラストにそのプールで起こった出来事が明かされるわけさ。なぜ母は動かなくなってしまったのかがね。あ、そう言えばこの映画って原題が『火事』なんでしょ?プールって水だから、そこで報復の連鎖という火事が鎮火されたってメタ表現なのかな。もしかしたらそうかもしれないね。この映画は決してハッピーエンドではないけれど、心を幸せに似た何かがずっしりと満たしてくれるラストだったよ。戦争映画って観終わった後に、悲惨過ぎるがゆえに放心状態になることが良くあるのだけれど、そんな感じだったら観てみようかな。
映画『灼熱の魂』のような映画・似てる作品・おすすめ
映画レビューまとめ
灼熱の魂のレビューをしていきましたが、今回はネタバレをせずに内容に触れるというのが非常に難しかったです。そのネタバレの中にこそ、この映画の本質が描かれていると思うので。
しかし、この映画はネタバレを読んだりせずに観たほうが絶対に面白い系の映画です。なのでアコーディオン形式にして隠して語りましたが、そこの部分がだいぶ長くなりました。
なんというか、正直な話、僕はほぼなんの前情報もなく観たので、最初はちんぷんかんぷんだったんですよ。演出があまり良くないっていうか、想像力で補って系の映画だったので。
でもそれでもストーリーが秀逸で芯が通っているから意味わからなくても面白かったんですよね。そして観終わった後にもさらに楽しみが待っているっていうね。
調べれば調べるほど、このシーンはこういう意味を現している、このシーンではここがポイントみたいな考察が出来て、深みのある映画です。オイラーの等式(eiπ+1=0)の意味とか。
戦争を扱った映画ではあるので、重苦しいとは思いますが、時間がある時にぜひ繰り返し観てみて下さいませ。もしかしたら人生の中で好きな映画の一本になるかもしれません。
ではでは映画『灼熱の魂』のレビューでした。
ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。
野口明人
あ、最後に『灼熱の魂』のレビュー点数です↓
スポンサードリンク
灼熱の魂 - 感想・評価
公開日:2010年9月17日
ジャンル:ヒューマンドラマ映画, ミステリー映画, 戦争映画
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
主演:ルブナ・アザバル, メリッサ・デゾルモー=プーラン, マキシム・ゴーデット