- 公開:2011/11/02
- 監督:エリック・トレダノ, オリヴィエ・ナカシュ
- 出演者:フランソワ・クリュゼ, オマール・シー, アンヌ・ル・ニ
- 製作国:フランス
- 上映時間:1時間52分
最強のふたりという映画をご存じでしょうか?体が不自由なお金持ちと、その介護人になった貧乏な移民との交流を描いたこの作品は2011年のフランス映画です。
この映画で特筆すべきなのは、日本のフランス語映画史上歴代1位の興行収入を叩き出した映画だという事。
そしてフランス国内でもこの映画は大ヒットしていて、歴代3位の興行収入なのです(ちなみに1位『タイタニック』、2位『ようこそ、シュティの国へ』、3位『最強の二人』)。
…と、ここまで書いておいてなんですが、正直なところ「日本でフランス映画のヒット作って言えば『アメリ』じゃね?」ぐらいなイメージしかありませんでした。
そもそもフランス国内で2位の『ようこそ、シュティの国へ』はタイタニックがアメリカ映画なので、実質フランス映画では1位なのですが、日本では上映されていません。
では『アメリ』はどうなのかと言えばフランス国内では50位です。
まぁ、何が言いたいのかと言えば、フランスと日本で同時に興行収入の上位にランクインするってのは珍しい事で『最強のふたり』はそんな稀な存在の映画というわけです。
Amazonの評価を見ても、他の映画評価サイトを見てもほとんどが星4~4.5の高評価。
そこまで持ち上げられると「本当にそんなに素晴らしい映画なのだろうか?」と思ってしまうところもありますが、こういう『〇〇の二人』という映画にくっそ弱い僕が映画『最強のふたり』を観てみたところ…。
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映画『最強のふたり』 – ストーリー
公開日:2011年11月02日
ジャンル:伝記映画, コメディ映画, ヒューマンドラマ映画
監督:エリック・トレダノ, オリヴィエ・ナカシュ
出演:フランソワ・クリュゼ, オマール・シー, アンヌ・ル・ニ
ネタバレ注意『最強のふたり』のあらすじまとめ
パラグライダーの事故で負った頸髄損傷により首から下が麻痺状態の富豪フィリップ。新しい住み込み介護人を探すべく、面接を行っていた。しかし、彼の元に来る人間たちは経験があるもののどうにもビビっと来るものがない。
そこへ黒人で貧困層のドリスがやってくる。彼は介護人の面接を受けに来たわけではなく、就職活動をしている証明をもらいに来ただけであった。不採用の証明が3枚あれば失業手当が出る。それを目的に面接を受けに来たのだが、フィリップは彼の面接の受け答えに好感を持ち、明日9時にきてくれ書類を用意しておくと告げる。
家に戻ったドリス。家にはたくさんの家族がいて、風呂に入ってもまともにお湯が出ない。決して裕福とはいえない生活だった。母親とも上手くいかず、口論の末、家を出ていけといわれてしまう。
行くあてのなくなった彼は、昨日の約束を頼りに9時にフィリップの豪邸を訪ねる。すんなり書類をもらえるかと思ったドリスだったが、なぜか家の中をあれこれと案内され、フィリップの元へ通されると彼が言った言葉は、
「君に1ヶ月の試用期間を与えたい。どうだ。2週間ももつまい」
だった。介護の経験もなく知識もない彼だったが、一人の部屋を与えられ、部屋に豪華な風呂さえある。その生活に揺られたドリスはフィリップの介護人を引き受けることにした。
3時間にわたるマッサージをしたり、頭を洗ってあげたり、タイツをはかせたり。なれないことばかりだったが、失敗しつつもこなしていくドリス。
時には聴いている方の気が引けてしまうような障がい者をバカにしたようなジョークを交えることや、障がい者であることを忘れ、普通にケータイ電話を渡したり、障害者用の車ではなくスポーツカーの方がイカしているだろ?とそっちを選んだり…。規格外のことばかりだったがどうやらフィリップもまんざらではなさそうだ。
感覚の部分でも全く正反対な二人だった。芸術に理解を示すフィリップ。1時間もの間、一枚の絵を眺め、購入するかどうか迷っている彼にドリスはこんな一枚の紙に染みがついたような絵、俺でも描けるとバカにした。その後、実際に彼は絵を描き、1万ユーロで買い手がついた。
何もかも常識はずれな彼を周りはあまりよく思っておらず、フィリップに助言をするものもいた。ドリスには前科があり半年間服役していた。あーゆー輩には注意したほうがいい。容赦ないぞと。しかし、フィリップは、容赦ないところがいい。彼は私に同情していない。ただ体が大きく健康で脳みそもある。彼の素性や過去など今の私にはどうでもいい事だと語る。
ドリスは言動こそ下品で空気を読まないところがあったが、フィリップの介護に関しては非常に献身的だった。フィリップが発作で苦しんでいるときはずっとそばに付き添い、顔に手を当て落ち着くようになだめていた。
さらに夜中に彼を連れ出し、外の空気を吸いながら夜のパリを堪能したりした。きっと普通の介護ではやらなかったようなことがフィリップにとっては新鮮で、良い気分転換になった。
一緒にマリファナを吸ったり、風俗に通ったり、決して褒められるような方法ではなかったけれどもそれがフィリップとドリスの仲を深いものにした。やがて、フィリップは亡くなった妻の話をし、自分がなぜ麻痺状態になったのかをドリスに打ち明けた。
一番辛い障がいは妻の不在だ。
今の医学では70歳まで生きるらしい。治療費はかかるがあいにくフィリップは金持ちで、お金には困らない。ただ生きながらえるだけの人生。
しかし、フィリップにはエレオノールという手紙だけでやり取りをしている女性がいた。心と心のつながりだと半年間も詩のやり取りをしている女性が。
その話を聞き、ドリスは電話をかけろとアドバイスする。嫌がるフィリップだったが、強引にドリスは電話をかけ無理やり話をさせると、それがきっかけにフィリップとエレオノールは電話でのやり取りが日課になり、急接近した。
そのうち電話では収まらなくなり、いよいよあってみようとなったが、フィリップは緊張しまくり。その前に送った自分の写真はドリスのアドバイスには反して、自分が障がい者だとわからない写真を送り、ドリスではないほうの介護役を連れて待ち合わせに向かうという相手に嫌われまい嫌われまいと努力したフィリップだったが、彼女はなかなかやってこない。
次第に我慢が出来なくなり、ウィスキーに手を出し、その場を逃げ出してしまった。やるせない気分のフィリップ。ドリスに電話をかけ、遠くに行きたくないか?と誘う。深く質問もせず理解を示すドリス。二人は貸切のジェット機に乗り空に飛び立った。
フィリップとドリスが向かった先はパラグライダーが出来る場所だった。落ち込んだ気分を忘れフィリップは空を楽しむ。ドリスは嫌々ながら空を飛び、ビビリながら楽しんだ。
気分転換が終わり、フィリップ邸に戻ると来客がいた。問題児であるドリスの弟。追い払おうとするドリスだったが、フィリップは君を頼りにしてきたんだ助けてやれと助言をする。ドリスは自分の家庭事情を話し、自分と弟の関係性を説明する。
ドリスはその件でフィリップの仕事を辞めることになり、母とも和解し、自宅に戻った。
フィリップは新しい介護人を雇いそれぞれが新しい生活を始めたが、どうにも新しい介護人とはウマが合わない。徐々にフィリップは体調が悪くなり、再びドリスは呼ばれる。
ドリスが見たのはフィリップの変わり果てた姿だった。彼を車に乗せ、俺に任せとけとドライブに出かける。そして海が見渡せる部屋へ連れて行き、伸びきったヒゲをそる。
ノドをかっ切ってくれ。
そういうフィリップに調子が戻ってきたなと笑うドリス。ヒゲをそり、髪の毛を整え、前の姿に戻ったフィリップはドリスにつれられるがままにお店に着く。
そして…。
『最強のふたり』の名言
私の一番の障がいは妻の不在だ。
容赦ないところがいい。
『最強のふたり』のおすすめポイント
この映画は良くも悪くも典型的なフランス映画
フランス映画というと、過去に『アメリ』や『あるいは裏切りという名の犬』をレビューしてきましたが、この映画はその二つで言えばどちらかというと『あるいは裏切りという名の犬』寄りの映画だと思います。
「特に激しいアクションがあるわけではないけれど、いぶし銀の面白さがある」っていうレビューを書いたんですが、今回の映画もどちらかというと激しいストーリー展開があるわけではありません。
すごい展開があるわけではなく、設定ありきなのです。まぁ、この映画は実話を元に作ったみたいなのでそれが当たり前なのかもしれませんが、僕としては超金持ちと貧民層の友情が面白いってだけで、ちょっと物足りなさを感じました。
アメリカ映画のようにお涙頂戴シーンを設定する必要はないわけですが、見所って言うのがちょっと少ないかなぁと。驚きが、心の動きがこの映画からはあまり引き出されないのです。そういうのが好きな人にはいいのかもしれないですけどね。
そこらへんが実話をもとにした伝記映画のバランスの難しさですよね。事実をもとに映画を作って、いろいろと演出しすぎちゃうと伝記映画ではなくなってしまうし、かといって事実だけで勝負出来るものも少ないし。
「これは実話です」ってだけでは評価が上がらず、作品の良さがあったうえで、後で実話と知って「マジで!?」と心動かされるものだと思うのです。
なので伝記映画にこだわりがないのであれば、同じような設定で金持ちと貧民層の友情物語つながりで『最高の人生の見つけ方』の方が個人的には好きかなと。まぁ、好みですけどね。あれはあれでぶっ飛んでいるんで。
映画『最強のふたり』 – まとめ
…とまぁ、最初のハードルが結構高かったので、あえて辛口でレビューしてみましたが、クソ映画だったわけではありません。それなりに面白い映画ではあったんですが、前に見た同じような設定の映画が頭にあったのでそれと比較するとちょっと弱かったかな…という感想です。
もうひと展開。あと、もうひと展開あれば、僕の中の評価も変わったかもしれません。ひと展開ないのがフランス映画の良さでもあるんですけどね。もうひと展開あったら、アメリカ映画っぽくなっちまうかもしれないし。
それは「無糖のコーヒーに砂糖を入れたら美味しくなるよ」って言っているようなものな気もするし。こうなると好みの問題と言えるかもしれない。
あとはまぁ僕の力不足ですけど、なぜドリスはフィリップの仕事を辞めなければならなかったのかが若干わかりませんでした。何回か見てわからなかったので「こうだったんじゃないの?」とコメントいただけると助かります。
ではではそういう感じで映画『最強のふたり』のレビューでした。
あ、この映画、音楽が素晴らしいです。特にドリスがフィリップの誕生日会でダンスを踊っているときのハッピー感は好きでした。あの曲がかかればもうそれだけで名作と思えてしまうっていうね。
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最強のふたり - 感想・評価
公開日:2011年11月02日
ジャンル:伝記映画, コメディ映画, ヒューマンドラマ映画
監督:エリック・トレダノ, オリヴィエ・ナカシュ
出演:フランソワ・クリュゼ, オマール・シー, アンヌ・ル・ニ