ラースと、その彼女という映画をご存じでしょうか?知らないあなたはぜひDVDのパッケージをよく見てみてください。
男性と女性が仲良く並んでいるジャケットだと思いますよね?
男性の方がラースで、この映画の主人公です。問題はもう片方の女性です。女性のように見える「彼女」はお人形さんなのです。
もうこれだけでかなりパンチの効いた設定でイロモノに思えるでしょう?でも、この映画はただのイロモノだと思ってはもったいない。
『ラースと、その彼女』はオーストラリア出身のクレイグ・ガレスピー監督の作品ですが、2008年アカデミー賞脚本賞にノミネートされたのです。
正直言って、最初の方はその違和感に笑いが止まりませんでした。この映画はコメディーか何かなの?っていうぐらい出オチ感がハンパなかったのです。
しかし、徐々に物語に引き込まれ、観終わる頃にはなんとなく心に温かい気持ちが生まれていた映画『ラースと、その彼女』のレビューをしていくことにしましょう。
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映画『ラースと、その彼女』 – ストーリー
公開日:2007年10月12日
ジャンル:コメディ映画, ヒューマンドラマ映画, 恋愛映画
監督:クレイグ・ガレスピー
出演:ライアン・ゴズリング, エミリー・モーティマー, ポール・シュナイダー
ネタバレ注意『ラースと、その彼女』のあらすじまとめ
ラースは兄夫婦のガスとカリンと隣り合わせで住んでいた。カリンのお腹の中には子供がいるがそんなカリンには心配している事がひとつあった。
ラースの対人関係である。ラースを朝食に誘ってもあれこれと理由をつけて断られてしまう。彼女の噂も聞かない。親しい友人もいない。いつも一人でいる。
しかし、ラースは優しい心の持ち主でみんなに愛されていた。同じ職場のマーゴにいたっては積極的に彼にアタックをしてさえいたが、ラースはそれを拒否した。
ガス夫婦は一緒に暮らさないかと提案もしてはみたが、それも断られた。
そんなラースだったが、ある日珍しくラースの方からガス夫婦の家を訪ねてきた。「外国から彼女がやってきた。彼女は足が悪く無口なんだ」と。
ガス夫婦はラースにも彼女が出来たと喜び、家に招き入れた。
…が、唖然とした。
ラースが連れてきたのはリアルドールの人形。ビアンカと名付けられたリアルドールに対してラースは本物の人間のように扱い、話をした。ガス夫婦は完全に頭がイカれてしまった弟を、ビアンカの健康状態が心配だという事を口実に病院に連れて行くことにした。
精神科のバーマン先生いわく、精神障害や統合失調症ではない。脳の異常でも遺伝子の問題でもない。ラースは妄想を抱いている。必要だからやっている事。出来れば話を合わせてあげてと提案する。ビアンカは意味があって存在する。
ラースはビアンカの存在によって確かに明るくなった。ガス夫婦とも食事をするようになったし、会社の同僚のバースデーパーティーにも参加するようになった。ただし、ビアンカと一緒に。
周囲は最初はラースとビアンカに対して不思議なモノや不気味なモノを見るような目で見ていたが、ガス夫婦が教会をはじめ、ラースと関わっている人に協力を求めた結果、理解を示してくれるようになった。
そのうち、ビアンカは町の洋服屋さんで働くようになり、教会のボランティアにも参加した。町中がビアンカが本当に存在する人間のように扱った。
ある日、ラースの知らない所でビアンカの予定が組まれている事があった。ラースは激怒し、みんな自分勝手すぎる。人の事なんか考えていないんだ。と言った。それを聞いたカリンはキレた。
ビアンカが町になじんでいるのはなぜだと思う?みんなラースが好きだからよ。車イスを押して、仕事へ連れてって、家まで送って、お風呂に入れ、服を着せて、朝起こして、夜は寝かせ、抱いて運んであげる。ビアンカは赤ちゃんじゃない。大きな女性なの。大変な作業なのにみんなやってくれてる。全部ラースの為。どうでもいいなんて二度と言わないで!
それを聞いたラースはちょっとずつ変わっていった。
大人になる事はどういう事だろう。ラースはガスに尋ねた。ガスは答えに困ったが、なんとか考えてそれに答えた。過去の事も振り返り、父親と弟を残して逃げ出した事を謝罪した。
会社でもマーゴを気に掛けるようになった。同僚とケンカした彼女を慰め、彼女と一緒に遊んだりもした。もちろんビアンカがいるから勘違いはしないで欲しいと忠告したうえで。
ラースはビアンカにプロポーズをした。しかし、彼女の答えはノーだったらしい。ラースはそのことに悩んだ。そしてある朝、ラースは騒いだ。ビアンカが起きないと。
救急車を呼んだ。ビアンカは救急車で病院に運ばれた。ビアンカは重症だとバーマン先生は判断する。ビアンカが病院に運ばれた事はすぐに町中に知れ渡り町中からお見舞いの花が届いた。ラースはそれに気が付き何かを想う。
ラースと一緒に家に戻ったビアンカを連れて、ガス夫婦は春の湖へ向かった。ビアンカと二人、物思いにふけるラース。ガス夫婦は二人を残し散歩に出かけた。
ラースは湖を見つめ、涙を流す。そしてビアンカにキスをして、何かを決意する。
…こんな感じのあらすじです。
こんな素敵な町があったら心の病院はいらなくなるかもしれない
とにかくこの映画は周りの人々の温かさを感じられる映画です。映画の見始めはビアンカがギャグにしか思えなくて、笑って仕方がなかったんですが、そんな笑っている事が失礼なことだったんだと自分で反省してしまうぐらい、町の人はラースの事を想い、ビアンカを普通の人間のように扱います。
町中がラースの妄想を温かく見守ってあげるのです。
大人になり切れなかったラースはその中で、大人になるという事を学び、成長していく。単なる出落ち映画だと思っていたのに、ここまで綺麗に締めくくるとは…。あっぱれでした。
この映画の一番初めの教会のシーンで、牧師が
「私たちの世界には法について書かれた本が沢山存在します。しかし、私たちが従うべき法はただ一つです。それが何であるか神に尋ねる必要はありません。神はすでに示してくださっているからです。互いを愛する事。愛こそが唯一にして真実の法なのです」
と演説していますが、それを証明している映画なんですね。観返してみて気が付きました。ラースを大きな沢山の愛で包んであげているんです。町中のみんなが。
本当に素晴らしい町でした。
映画『ラースと、その彼女』 – まとめ
この映画の登場人物はすべての人が愛に満ちています。愛こそが人を救う事が出来る方法なのだと言っているかのような映画です。
正直な所、不気味の谷現象でビアンカはどうしても僕には奇妙な存在にしか見えなかったんですけどね。見る人によってはビアンカが本当の人間に見えてくるのかもしれません。
不気味な存在をここまで受け入れて、扱ってくれる人の優しさを感じられる映画。そんな感想です。
精神科の先生の演技も素晴らしかった。演技の節々に優しさに溢れています。
人の優しさに触れたいと思った人にぜひお勧めの映画です。
はい。
ではでは、そんな感じで。『ラースと、その彼女』でした。
…あ、ラース役のライアン・ゴズリングはきみに読む物語の主人公役の人なんですね。ラースの口髭があまりにも独特過ぎてわからなかったです。
ラースと、その彼女 - 感想・評価
公開日:2007年10月12日
ジャンル:コメディ映画, ヒューマンドラマ映画, 恋愛映画
監督:クレイグ・ガレスピー
出演:ライアン・ゴズリング, エミリー・モーティマー, ポール・シュナイダー
ラースと、その彼女
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ストーリー - 75%
75%
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キャラクター - 95%
95%
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演出 - 85%
85%
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映像 - 70%
70%
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音楽 - 70%
70%
映画レビューまとめ
町の人々の温かさに癒される。こんな町に住みたい。