マン・オン・ザ・ムーンという映画をご存じでしょうか?『カッコーの巣の上で』でアカデミー監督賞を受賞した事があるミロス・フォアマン監督の1999年の映画です。
実在したエンターテイナー、アンディ・カウフマンの伝記映画なのですが、ジム・キャリーがそのアンディ・カウフマンを演じています。
僕はアンディ・カウフマンという存在をこの映画まで知らなかったのですが、もしあなたもそうだとしたら、この映画を観終えた後に、ぜひアンディ・カウフマンのネタ動画を観てみてください。
ジム・キャリーの再現技術の高さに驚かされるはずです。マジでソックリ。
という事で映画『マン・オン・ザ・ムーン』のレビューをしていきたいと思います。
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映画『マン・オン・ザ・ムーン』 – ストーリー
公開日:1999年12月22日
ジャンル:伝記映画, コメディ映画, ヒューマンドラマ映画
監督:ミロス・フォアマン
出演:ジム・キャリー, ダニー・デヴィート, ジェリー・ベーカー
ネタバレ注意『マン・オン・ザ・ムーン』のあらすじまとめ
アンディ・カウフマンは35歳の若さでこの世を去ったアメリカの伝説的エンターテイナー。彼が送った人生は、時に人には理解されないほどの笑いを求め続けた人生だった。
小さいバーで小さなショーをやっていたアンディ。彼の芸は人々には受け入れられず店からはすぐにクビを告げられ店を転々としていた。そんなアンディに転機が訪れる。たまたま彼を観ていたジョージ・シャピロは痛くアンディを気に入り、彼をスカウトします。アンディはジョージ・シャビロに世界一のショーがしたい。カーネギー・ホールで最高のショーがしたいのだと夢を語る。
敏腕プロデューサーのジョージ・シャビロによってテレビ出演を手に入れ、一躍人気者になったアンディ。そんな彼のもとに更なるチャンスが転がり込む。人気テレビドラマのTaxiに出られるというもの。しかし、アンディは苦い顔をする。ドラマには出たくないと。こんなチャンス二度とないかもしれないというジョージ・シャビロに条件付きで出てもいいと答えるアンディ。
アンディの条件はこうだった。
「トニー・クリフトンをゲストとして呼べ」
…トニー・クリフトンって誰?よくわからずもアンディが出てくれるのならとジョージ・シャビロは条件をテレビ局に持っていく。そして、テレビ局の人間にトニー・クリフトンをゲストとして呼ぶのであれば、出てもいいと言ってるよ!と伝えると、テレビ局の人間は、「トニー・クリフトンって誰?」とジョージ・シャビロと同じ反応。
心配になったジョージ・シャビロはトニー・クリフトンが出演するというショーに顔を出した。そこにはでっぷりと太った腹に、決してセンスがよいとは言えない服装の男がいた。そして彼の歌声ときたら聴けるレベルではないほどひどく、極めつけはショーを見に来ている客を罵倒する始末。観ていた客も水をかけられ罵られひどいもの。
なんちゅー男なんだと思っている矢先、ジョージ・シャビロの目の前に現れたのはトニー・クリフトンの格好をしたアンディだった。そしてさっきまで水をかけられ罵られていた男とともにおもしろかっただろ?と得意顔。トニー・クリフトンとはアンディが作り出した別の悪役キャラクターで、しかもサクラまで用意している手の込んだショーだった。
この考えに喜んだジョージ・シャビロはテレビ局の人間に一人のギャラで二人雇えるなんてお得でしょ?とアンディが提示した条件を飲ませる。
しかし、ここからのアンディはもう誰も止められない。お客が望んでいるものは今までに見たことがないショーだ、とネタは一切やらずにフィッツジェラルドのグレードギャッツビーを一冊丸々朗読するだけのショーをしたり、女性を相手にプロレスをしたり、テレビで差別用語を連発したり、だんだん客もついていけなくなる。
そんな彼を天才だという人も一部ではいるにはいたが、彼を観た客のほとんどは怒ってしまうものばかりだった。彼は客を笑わせるのではなく、自分がいかに楽しめるかを考えているようだった。
そして彼に早すぎる病魔が訪れる。酒もたばこもやらなかったアンディだったが、世にも珍しい肺がんにかかってしまった。
彼が病気だと告白しても周りは、またお得意のギャグだろ?と信じてくれない。アンディは今まで何度となく人々をだまし続け驚かせてきた。そんなアンディはまぎれもないオオカミ少年になっていたのでした。
しかし、それが本当のことだとわかると、彼は最期に盛大にショーがしたいとカーネギー・ホールで見事、大勢が喜ぶようなショーをやり遂げる。
そしてさらに病気が悪化し、いよいよだというとき奇跡が起こせる治療を行っているというフィリピンの噂を聞きつけ、最後の希望にフィリピンまで行くアンディ。
…そこには今まで何度も人々をだまし続け、驚かせていたアンディも思わず笑ってしまうほどの結末が待っていました。
彼の死後、1年がたったある日のクラブ。
そこには前と変わらずでっぷりとしたおなかでダサい衣装を着たトニー・クリフトンが人前でひどい歌声を聴かせていたのでした。
めでたしめでたし。
『マン・オン・ザ・ムーン』のおすすめポイント
この映画は実在する人の伝記だということを理解していないと良さがまったくわからない映画だと思う
この映画の主人公であるアンディ・カウフマンは映画越しで観ていてもひどいと思えるぐらい破天荒なエンターテイナーです。観客の神経を逆なでするようなことも平気で行い、しかもそれがすべて計算だというのだからたちが悪い。
決して映画の主人公としてはふさわしくない共感をまったく得ないキャラクターの持ち主です。なので、これを創作の映画だと思って観てしまうと、ジム・キャリーの迫真の演技も悲しく、胸糞悪いだけの意味不明映画になってしまいます。
とくに、日本人とアメリカ人の笑いの感性もまったく違うので、何が面白いの?っていうことばっかりな気がします。
でも、いったん、本当に実在した人物をジム・キャリーが再現しているのだということを理解すると、その再現性の高さに脱帽してしまうぐらい演技がうまいのです。
たとえば、アンディ・カウフマンの有名なネタで登場してから一言もしゃべらずに笑いをとる「Mighty Mouse」というネタがありますが、これなんてまさに目線から何から何までそっくりです。なんだったら、ジム・キャリーがやっていたほうがグレード高いんじゃね?っていうぐらい再現できています。
ぜひ、動画と映画でジム・キャリーがやったMighty Mouseを見比べてみてください。この映画の製作陣には生前のアンディ・カウフマンと関わっていた人が多々いますが、撮影期間中はジム・キャリーなんていなくて、そこにいたのはアンディ・カウフマン本人だったと言われるぐらい特徴や癖から何まで模写出来ているジム・キャリーが観られます。
映画『マン・オン・ザ・ムーン』 – まとめ
この映画はいい意味でも悪い意味でもジム・キャリーの演技力がすべての映画です。
たぶん、アンディ・カウフマンの事をこの映画以前に知っていて、実際にテレビ出演しているシーンとかを観た事がある人ならこの映画もスッと入っていけるのかもしれないですが、どうしてもアンディ・カウフマンの事を知らない人が観てしまうと受けいられないシーンが多々ありすぎて「映画の作品としては…」っていう感じでした。
『イエスマン “YES”は人生のパスワード』とか、『マジェスティック』などで過去に大絶賛したぐらい僕はジム・キャリーを崇拝しているんですが、この映画は今までのなかではいまいちな作品でした。
ジム・キャリーだからこそ出来る世界観だったのかもしれないですが。
…まぁ、アンディ・カウフマンを知って、伝説つながりで江頭2:50を連想したんですけどね。ただ、笑いの取り方は違いますよね。
僕は江頭2:50を神様だと思っています。たぶん、アメリカと日本の笑いの追及の仕方の違いでしょう。誰かが不幸になる笑いが僕はあまり好きではないのです。
…という感じの映画でした。
再販もあまりされていないみたいなので、需要があるかどうかわかりませんが、特典映像を見る限りではかなり製作陣に愛されている映画みたいなのでそれも含めて観るとこの映画も再評価出来るかもしれません。
多分、この映画はアンディ・カウフマンという天才の理解されない事への孤独感を描いた作品だと思います。そして僕はこのカウフマンを理解出来なかったのでそういう意味では映像として成功しているのではないでしょうか。
ではでは、今日はこんな感じで『マン・オン・ザ・ムーン』の感想でした。
マン・オン・ザ・ムーン - 感想・評価
公開日:1999年12月22日
ジャンル:伝記映画, コメディ映画, ヒューマンドラマ映画
監督:ミロス・フォアマン
出演:ジム・キャリー, ダニー・デヴィート, ジェリー・ベーカー
マン・オン・ザ・ムーン
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ストーリー - 70%
70%
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キャラクター - 55%
55%
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演出 - 85%
85%
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映像 - 60%
60%
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音楽 - 65%
65%
映画レビューまとめ
ジム・キャリーの演技力が絶賛された作品。アンディ・カウフマンを直接知らなくてもそれなりには楽しめる。