ヘアスプレーという映画をご存知でしょうか。1988年と2007年の映画があるのですが、今回観たのは2007年のアダム・シャンクマン監督の方です。
この映画は1988年のジョン・ウォーターズ監督の映画を元にしたミュージカル映画なのですが、なんといってもジョン・トラボルタが特殊メイクにより巨体の女性を演じているのが特徴です。
しかもですよ? その女性ジョン・トラボルタが歌っちゃうんですよ。上手いんですよ。こりゃーもうパンチが効いている。
ここまで聞くと、『ヘアスプレー』のタイトルに沿うようにイロモノ感満載ではありますが、この映画侮ってはいけません。
ミュージカル映画があまり得意ではない僕が言うのはなんですが、今まで観てきたミュージカル映画の中で一番面白いです。
ということで映画『ヘアスプレー』についてレビューしていく事にしましょう。
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映画『ヘアスプレー』 – ストーリー
公開日:2007年07月20日
ジャンル:コメディ映画, ヒューマンドラマ映画, ミュージカル映画
監督:アダム・シャンクマン
出演:ジョン・トラボルタ, クイーン・ラティファ, ニッキー・ブロンスキー
ネタバレ注意『ヘアスプレー』のあらすじまとめ
1962年。アメリカのボルチモアには、体はビッグサイズ、髪の毛もスプレーでガッチガチに盛っている学生の女の子トレイシーが住んでいた。
彼女は何よりも歌とダンスが大好き。学校が終わるとすぐに親友のペニーを連れて家に帰り、ティーンに人気なダンステレビ番組『コーニー・コリンズ・ショー』に見とれるのだった。
『コーニー・コリンズ・ショー』には同じ学校の特待生のリンクが歌手として出演している。トレーシーはリンクにメロメロ。自分も機会さえあれば番組に出演したいと思っていた。
そんなとき、『コーニー・コリンズ・ショー』のメンバーの一人が休暇を取るという事でメンバーの空きが出来た。オーディションをやるというので学校をさぼってそのオーディションを受けに行く。
しかし、その番組のプロデューサーのベルマはトレーシーが太っているという理由だけで落とした。
トレーシーはショックのさなか、学校へ戻ると学校をさぼった事が先生にバレてしまい、居残りさせられる。しぶしぶ居残り教室に向かうとそこにはシーウィードをはじめとする黒人の生徒たちがダンスを踊っていた。その黒人の生徒たちとすぐに打ち解け、一緒にR&Bのステップを踏んでハッスルした。
トレーシーが興奮して元気よくお尻をフリフリダンスを踊っていると、たまたま通りかかったリンクの目に留まり、キミなら番組に出れるとコーニー・コリンズ主催のダンスパーティーに招待される。そこでウキウキに踊ったトレーシーはコーニーからのスカウトされ念願の『コーニー・コリンズ・ショー』にレギュラー出演出来るようになった。
トレーシーを太っているという理由だけで落としたベルマはあまり良い顔をしなかったが、その意に反して、巷ではトレーシー人気が爆発。トレーシーの髪型を真似る若者が続出し、スポンサーのヘアースプレーも売り上げが上がった。トレーシーの父親が作ったトレーシーグッズも売れて、父親が経営しているお店の売り上げも上がった。
トレーシーの人気が上がるにつれ、『コーニー・コリンズ・ショー』でベルマの娘という事で看板をはっていたアンバーは孤立するようになる。
それが気に入らないベルマはトレーシーを排除するためのあれやこれやと手を尽くす。
この時代にはまだ人種差別が色濃く存在しており、白人と黒人は一緒に踊る事が許されていなかった。『コーニー・コリンズ・ショー』でも月に一度ブラック・デーという黒人が出演出来る枠が用意されていたが、それ以外では黒人がダンスに参加することは許されていない。
トレイシーは番組初出演時に「すべての放送回を”ブラック・デー”にしたい!」と叫んでいた。そのことを逆手に取ったのか、ベルマはブラック・デーを完全に廃止してしまった。黒人の締め出しである。
そのことに憤怒したトレイシーは黒人たちと一緒にデモを起こすことを提案する。母親はトレイシーの身を案じ、リンクは自分の将来のリスクを考え反対するが正しい事をやっているとトレイシーは意見を曲げない。
テレビ局に訴えかけるデモ隊の前に警察が立ちはだかる。そしてあまりに話を聞かない警察官にトレイシーは持っていたプラカードで小突いてしまう。その行動により、トレイシーに逮捕命令が下りトレイシーは追われる身に。
親友のペニーの家に隠れようとするが、ペニーの母親は敬虔なキリスト教徒。逃走犯をかくまった悪い娘としてペニーは縄で縛られ、トレイシーも監禁されてしまう。そこに助けに来たのはペニーと恋仲になっている黒人のダンサー、シーウィード。肌の色なんて関係ないさとお姫様を救出する。
無事、その場を逃げだし、黒人ダンサーが集まる場所へ。
その頃、リンクはニュースでトレイシーが警官にバールで殴り掛かったなどという有らぬ疑いから追われる身となった事を知り、トレイシーのそばにいてやらなかった自分の無力さを恥じた。そして、トレイシーへの想いに気が付く。
翌日、ミス・ヘアスプレーコンテストが開催された。ベルマはテレビ局に大勢の警備員を配備し、トレイシーのテレビ局への侵入阻止を図る。
コンテストは一番人気のトレイシー不在のまま進み、ミスヘアスプレーはベルマの娘のアンバーにほぼ決まりかけていた。そんな時、トレイシーは家族や黒人たちの協力を得て、テレビ局への侵入を成功させ、生放送中のコンテストに割り込んでいく。
そして、トレイシーの乱入を皮切りに様々な奇跡を起こす。
見事、ミス・ヘアスプレーコンテストの栄光を手にしたのは…
…こんな感じのあらすじです。登場人物が多くなってしまったので結構端折りましたが、リズミカルに進んでいくミュージカル映画です。
とにかく始まりから終わりまでハッピーな音楽が身を包んでくれる
この映画、僕の苦手なミュージカル映画なんですが、そんなこと感じさせないぐらいハッピーでリズミカルな楽しい歌とダンスを織り込みながらテンポよく話が進んでいきます。
歌が本当に良くて、今までミュージカル映画をいくらか観てきたはずでしたが、サントラ欲しい!と思って買ってしまったのはこの作品が初めてです。
「Without Love」はトレイシーの親友のペニー、かわいい。リンクが若かりし頃のチェット・ベイカーに見えて仕方がない。髪型だろうな。
「You Can’t Stop the Beat」はジョン・トラボルタが巨体を振り回して踊っている姿が圧巻。
そして、黒人のママさんがこれでフィナーレよと力強く歌っている歌詞が素晴らしくて泣いてしまった。日本語字幕がないのが残念。
なんか知らないけど、ラストのシーンで泣いてしまったよ
こんなにハッピーで楽しいムードの映画で泣くなんて思っていませんでしたが、ラストのシーンで何かが胸にジーンとこみ上げてきて、黒人の女性がフィナーレを飾った時は涙が頬をつたっていました。
黒人差別を主題に扱ったミュージカルで、わかりやすい敵がいて、純粋無垢な主人公が世界を動かしていく奇跡。
最初に観た時はちょいと太った主人公が満面の笑みで歌っている姿が少々おかしく思っていましたが、気が付けばミュージカル映画苦手な僕がミュージカルの部分を何度もリピートして観てしまっている。
本当に音楽が良くて、ひたすらまっすぐで自分が太っている事を全く苦に思っていない主人公が一生懸命笑顔で歌って踊っている姿が胸を打つ。
さらに、ジョン・トラボルタが女装して演じたトレイシーの母親役がじみにイイ味を出している。
『パルプ・フィクション』でも素晴らしいダンスを披露したジョン・トラボルタだけど、今回は巨体を持った女性の役でダンスをしている。
もしかしたら、特殊メイクがうますぎて、ジョン・トラボルタって事前に知らなければ気が付かなかったかも。それだけ自然に女性の役をこなしていた。この母親と父親の関係性もよかったな。自分の体にコンプレックスを感じている母親とそれをまっすぐな愛で愛している父親。
さらに父親のトレイシーに対する大きな理解力を持った愛情から発せられる言葉も胸を打った。正しいと考える事があるのなら、古い人間は気にするな。パパたちがお前から学ばせてもらうよ。というセリフが本当に好き。
過保護気味の母親と何でも理解してくれる父親。いい感じのバランスだよな。すごい理想的な幸せの家族だわ。
映画『ヘアスプレー』 – まとめ
この映画、何がいいかと言われれば音楽が秀逸と言えるんだけど、忘れちゃならないのが音楽につける翻訳の歌詞。音楽の節に違和感のないような翻訳がされていて、歌を聴きながら意味がすっと入ってくる。
それがあったからラストのシーンでは泣いてしまったんだと思う。
大変この作品が気に入ったので、字幕と吹き替え、字幕+吹き替えの三回繰り返して観た。トレイシーの吹き替えの声が、サクラ大戦の李紅蘭役の渕崎ゆり子なのが嬉しかった。サクラ大戦好きだったし。李紅蘭好きだったし。トレイシーの声の出し方がまんま李紅蘭だったし。
それとジョン・トラボルタが演じた母親役の声は山寺宏一が当てているんだけど、すごく自然だわ。本当に山ちゃんの声って耳に心地よいよな。おかまのように聞こえないもん。本当に女性でこういう声の人いるし。
まとめなのに、まとめてない。
とりあえず、ミュージカル苦手な僕がクッソ薦めたくなるぐらいすごくいい映画でした。
はい。
サントラ含め、存分にヘアスプレーを楽しんでください。
ではでは。
ヘアスプレー - 感想・評価
公開日:2007年07月20日
ジャンル:コメディ映画, ヒューマンドラマ映画, ミュージカル映画
監督:アダム・シャンクマン
出演:ジョン・トラボルタ, クイーン・ラティファ, ニッキー・ブロンスキー