『バタリアン リターンズ』ホラー映画なのに泣きそうになる

バタリアン リターンズという映画はご存じでしょうか?ホラーなのに笑えるコメディ映画である『バタリアン』が好評で5つも続編が作られましたが、その第3作品目が1993年のブライアン・ユズナ監督による『バタリアン リターンズ』です。

原題は『Return of the Living Dead 3』なので、バタリアン3としても良かったと思うのですが、この映画、実は以前の作品とは一線を画すものとなっております。

と、言いますのも、ホラーなのに笑えるコメディ映画が『バタリアン』のアイデンティティーでしたが、コメディ要素を抑えめにして、シリアス展開に持っていったのです。

しかし、これがファンの間では大不評。「こんなのバタリアンじゃない。他でやれ」とたたかれることになります。

まぁ、1が良かった作品というのは2、3がそれを超えられないジンクスというのがありますから、世間的にその評価は仕方がない事だとは思うのですが、僕は全く別の感想を抱きました。

そう。

『バタリアン』を受け入れられなかった僕は、映画『バタリアン リターンズ』こそが名作なのでは?と思ってしまったのです。

という事で、真っ当な感覚をお持ちの方や、みんなが良いと思うものを良いと思いたい方は別のレビューを読んでもらうことにして、僕と同じような変わった感性のあなただけ、この続きのレビューをお読みくださいませ。

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映画『バタリアン リターンズ』 – ストーリー

バタリアン リターンズ
3.9

公開日:1993年10月29日
ジャンル:ホラー映画
監督:ブライアン・ユズナ
出演:ケント・マッコード, ジェームズ・T・キャラハン, サラ・ダグラス

恋人を事故で死なせてしまった青年が、ゾンビ化させる薬を使って彼女を生き返らせてしまい、軍に追われながら、理性を保てなくなりつつあるゾンビ彼女と逃げる話…

ネタバレ注意『バタリアン リターンズ』のあらすじまとめ

主人公、カートの父は生物兵器を開発する軍の施設の指揮官だった。ある日カートは父親のIDカードをこっそり手に入れ、恋人のジュリーとともにその施設へ忍び込む。

そこでカートとジュリーはガスをかけられた死体が生き返る実験を盗み見する。あまりの衝撃に物音を出してしまい、見回り人に見つかりそうになった二人はそこで施設を抜け出す。興奮しながら家でその事を思い返す二人だったが、その後施設で生き返った死体が暴れだし、複数の死者を出したことは知らない。

父親はその失態により別の土地へ飛ばされることになった。そのことを家に帰ってカートに伝えたが、カートは恋人のジュリーと離れたくない為、父親の言いつけに逆らい家出する。

バイクに乗って未知の未来を想像し興奮する二人。これからは二人だけの世界。完全な自由だ。

ジュリーは後ろからカートにじゃれつく。ほんの少しの軽はずみだったが、そのことでカートはハンドル操作を誤り、バイクは転倒する。その際、ジュリーは吹っ飛ばされ運悪く大木に頭を強くぶつけ死んでしまう。

悲しみに暮れるカート。その時、死体を生き返らせるガスの事を思い出し、ジュリーを背負い軍の施設に侵入する。ゾンビ化させるガスだと知らずガスを彼女に吹きかけるカート。彼女は息を吹き返し動くようになったが、それと同時にガスに閉じ込められていた別のゾンビも復活してしまう。

ゾンビから逃げる二人。軍の施設も非常態勢に入る。何とか逃げ出しバイクで町へ向かう二人だったが、監視カメラですべてを悟ったカートの父はゾンビ化したジュリーを指名手配する。もし、ジュリーが息子に咬みつき息子が感染してしまったら息子も処分しなければならない…。

事態がイマイチ呑み込めていないジュリー。カートの説明で自分が生き返った事を知ると、自分の体の異変を感じ取る。頭がおかしくなりそうになる。とてつもない空腹感に襲われる。理性が保てない。

ジュリーに何か食べ物をと、町はずれのコンビニに入る。そこにはゲームで遊ぶチンピラ集団がいたがジュリーはあまりの空腹感でお構いなしに商品を食い漁る。それを見たチンピラはカートに向かってちゃちゃをいれる。

腹を立てたカートはチンピラを殴ってしまい一悶着を起こす。それを見てケンカを止めに入った店員だったが、チンピラにピストルで撃たれてしまう。逃げ出すチンピラ。その際、ジュリーはあまりの空腹感に一人のチンピラの腕を食いちぎる。

指名手配中のジュリーとカート。店の非常ベルで駆け付けた警官から逃げる為、車に飛び乗る。腹を打たれた店員は病院に運んでくれと一緒に車に乗る。非常事態宣言が出された警官は容赦なくカート達が乗る車を発砲する。その銃弾は運悪く、店員の頭を吹き飛ばし無惨な姿に。

必死で運転するカート。ジュリーは無残な姿になった店員に近寄り、脳みそを食い始める。それに気が付いたカートは必死でジュリーを止める。我に返ったジュリー。理性が保てない。昔の自分じゃないみたい。

車を捨て、地下水道へ逃げ込む二人。頭がおかしくなりそうなジュリーはカートにどうして私を生き返らせたのよ!こんなに苦しいのなら死にたいと川へ飛び込み自殺を図る。しかし、すでに死んでいる彼女は死ぬことが出来ない。

川辺で気を失っている彼女を見つけ、ジュリーを抱きしめるカート。そこに先ほどジュリーに咬みつかれ体に異変が起きつつあったチンピラたちが仕返しをしにやってきた。ジュリーとカート、そして地下水道で出逢ったリバーマンと名乗る親切なホームレスは再び地下水道へ逃げ込む。

リバーマンの家になっているポンプ室。そこに避難し、体が冷え切っているジュリーを寝かせる。ジュリーは理性を保てなくなりそうになるたびに自分の体を傷つけ、その痛みで自分を抑えた。

やがて、チンピラたちはその場所を見つけ、家の前で見張りをしていたリバーマンに襲いかかる。リバーマンの悲鳴を聞き、部屋にジュリーを残し、チンピラへ向かって行ったが返り討ちにあう。手も足も出ないカートとリバーマン。

そこへ全身傷だらけで洋服もびりびりに破いたジュリーが部屋から出てきた。ジュリーのアブノーマルな姿に興奮したチンピラの一人はジュリーを連れ、部屋へ籠る。

そして数分後、チンピラは無残な死体の姿でジュリーに引きずられ出てきた。その姿を見て逃げ惑うチンピラたち。次々にジュリーはチンピラに咬みつき脳みそを食らう。ジュリーに食われたチンピラは少しすると、ゾンビとなって復活し気が付けば地下水道はゾンビだらけになっていた。

カートの叫びに我に返ったジュリー。リバーマンは反対したがジュリーとともに3人で部屋に閉じこもりチンピラゾンビに対応する。鍵を閉めた扉ももう少しで破られそうだ。

ポンプ室にあるハシゴから逃げ出そうとリバーマンは提案する。チンピラとの戦いで足を打たれたリバーマンを優先し、カートが扉でゾンビに抵抗している間にジュリーとリバーマンを先へ逃がす。

何とか鉄パイプで応対していたカートだったが、いよいよ扉が破られカートもハシゴの方へ逃げ出す。そこで見たものはリバーマンの脳みそを頬張るジュリーの姿だった。

親切にしてくれていたリバーマン。そのリバーマンを食べてしまったジュリー。ジュリーに絶望したカート。襲い掛かるチンピラゾンビの姿があったが、あまりのショックでその場を動けない。カートの体にチンピラゾンビの手が触れる。

・・・その時、父親の部隊が駆け付け、ゾンビの動きを止める麻酔銃をチンピラゾンビの頭に打ちこんだ。次々と撃ち込まれる麻酔銃。そしてついにその銃先はジュリーに向けられる。

…まだまだ話は続きますが、これ以上書くと見た時の面白みが半減しそうなので詳しいあらすじはこの辺で。

『バタリアン』で出てきたゾンビの最悪な設定を本当にうまく生かしている

前回観た『バタリアン』では、今までのゾンビ映画に出てくるゾンビとはまるっきり違う特徴を持ったゾンビが出てくるのがあまりにもおかしくて、ホラー映画として観れたもんじゃありませんでした。あれはコメディです。

知能があるゾンビ、言葉をしゃべるゾンビ、走り回るゾンビ。

普通に電話で話すし、人間とコミュニケーションもとれる。しかも、ゾンビと言えばゆっくりとした動きで追いかけてくるから恐怖を感じるのに普通に走り回る。それじゃあもうゾンビじゃないじゃんっていう。

なのに自分の頭の中ではホラー映画として観始めちゃったものだから、受け入れられない。

言ってみればマイク一本の会話のやり取りで笑えるゴリゴリの漫才見たかったのに、ネタ全部漫才コントで、これ漫才じゃなくてよくない!?って感じだったのです。

もちろん、「ジャンル分けって必要?面白かったらなんでもいいだろ!」っていう人がいるように、笑えるホラーがあってもいいだろ!って話なんですが、自分の中では恐怖と笑いはお互いに引き立たせるにはミスマッチな気がするのです。

恐怖があるから笑えるというより、笑ってしまったら怖くなくなるって感じなのです。だから「ホラーであってコメディ」ではなく「ホラーのように見えてコメディ」だったのが『バタリアン』です。

そしてホラーとして観てたのにコメディ映画になっていて、ラストがあんな無惨な結末だったからなんやねんこれ!と拒否してしまったのです。

その点『バタリアン リターンズ』は恐怖とシリアス。似たようなベクトルに向いている感情の合わせ技なので、ホラー映画として受け取りやすかった。

まず無駄にゾンビを増幅させたりしません。前回はとにかく物語の中盤ぐらいから無数のゾンビが発生して収拾がつかなくなっていましたが、今回出てくるゾンビは両手で数えられるぐらいしか出てこない。

しかも、前作は死んだゾンビはすでに死んでいるから頭を吹き飛ばそうが何しようが人間には抵抗する手立てがないという設定でしたが、今回は麻酔銃というものが存在します。もちろん、死んだゾンビはすでに死んでいるので倒すことは出来ない設定に変更はありません。

なんとか対応策が出てきたのが大きな所。

そして知能を持つゾンビ。人間と会話が出来るゾンビ。走り回るゾンビ。というゾンビ潰しの設定ですが、ゾンビと人間のハザマで揺れるジュリーの設定にぴったりです。

知能を持つが為に人間としての理性とゾンビとしての本能の葛藤に苦しむ。人間と会話が出来るゾンビだからこそ、恋人カートとのやり取りが生まれます。そして走り回るゾンビだからこそ、追われるものから逃げるゾンビになれました。

今までのゾンビの設定では追いかけることは出来ても逃げることはなかったですから。

うん。ゾンビ化してしまったジュリーですが、ゾンビとしてあり得ない設定があるからこそ人間として見れて、ゾンビと人間のラブストーリーが成立するんですね。

音楽さえよければ多分泣いていた

ちなみに無印バタリアンは、ギャグ路線だって途中で分かったのでパンクな音楽も気になりはしませんでしたが、今回は終始シリアス調です。なのに音楽はパンクとまではいきませんが、似つかわしくない音楽を使っていて、シリアス感が引き立たない。

始終ずっと画面にひきつけられるストーリーであって、心も揺さぶられるシーンが沢山あったんですが、ジーンとは来ても泣けませんでした。

演技もよかったし、設定もよかったんですけどね。もう一声!って感じの映画です。

やっぱり映画って音楽重要なんですね。あまりにマッチしていないラストシーンの音楽にイライラしました。

感動的だったはずなんですけどね。うーん。多分、普通にピアノの旋律とかだったら泣いていたと思うんだけどな。そこだけ残念です。そう考えると『バタリアン』は音楽や演出の整合性のとれたバランスの良いコメディ映画だったんじゃないか?と思えてきてしまう気もしますが。

映画『バタリアン リターンズ』 – まとめ

とりあえず、泣ける映画として紹介されていたので観てみましたが、泣くまでいかないにしてもいい映画でした。

まぁ、『バタリアン』が評価が高いのに受け入れられなかったショックがあっただけに、そのギャップからくる評価もあるのかもしれません。

ただ、父と子の不和や、リバーマンのようなよく出来たサブキャラの存在、そして切ないラブストーリーがしっかりと作られていて見所満載なのは事実です。

なので、世間の評価とは裏腹に、これは観る価値があるなと思える映画でした。

オバタリアンという流行語すら生み出したバタリアン。世間的な評価は『バタリアン』の方が高く、『バタリアン リターンズ』は低めですが、この記事を読んで興味をもってくれたなら、ぜひ観てみてくださいませ。

ちょっと痛々しいグロテスクなシーンもあるので万人にはお勧めできないんですが、グロテスクに耐性があって、ちょっと泣けるホラー映画が観たいというのであればこの映画『バタリアン リターンズ』はオススメです。

ではでは、今回はそんな感じで。


バタリアン リターンズ - 感想・評価

バタリアン リターンズ
3.9

公開日:1993年10月29日
ジャンル:ホラー映画
監督:ブライアン・ユズナ
出演:ケント・マッコード, ジェームズ・T・キャラハン, サラ・ダグラス

バタリアン リターンズ
  • ストーリー - 85%
    85%
  • キャラクター - 90%
    90%
  • 演出 - 80%
    80%
  • 映像 - 70%
    70%
  • 音楽 - 45%
    45%
74%

映画レビューまとめ

無印バタリアンとは全くの別物だと思ったほうが良い。泣きそうになる良いホラー。

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