ドニー・ダーコという映画をご存じでしょうか?何語やねんって感じの言葉ですが、カリフォルニア大学で映画製作を学んだリチャード・ケリーという若者が映画監督として注目されるようになった作品です。
無名だった彼が大学卒業後に書いた脚本『Donnie Darko』が『E.T.』や『チャーリーズ・エンジェル』で有名なドリュー・バリモアの目に止まり、彼女のプロデュースで2001年に上映された映画『ドニー・ダーコ』。
実は映画館での収益はそれほど上がらなかったのですが、DVD化されると「リバース・ムービー」と騒がれ始め、ヒットチャート1位を獲得するというカルト的人気を博します。
リバース・ムービーと言えば、このサイトでもレビューをした『メメント』が思い浮かぶのですが、『メメント』を調べていた時に、某2ちゃんねるの映画板でちょこちょこ『ドニー・ダーコ』の名前が出ていて、僕はこの映画の存在を知りました。
んで、まぁとりあえず観てみるか!と軽い気持ちで再生ボタンを押したのですが、映画『ドニー・ダーコ』はとんでもない映画だったのです…。
スポンサードリンク
映画『ドニー・ダーコ』 – ストーリー
公開日:2001年01月19日
ジャンル:ヒューマンドラマ映画, ミステリー映画, SF映画
監督:リチャード・ケリー
出演:ジェイク・ジレンホール, ジェナ・マローン, メアリー・マクドネル
ネタバレ注意『ドニー・ダーコ』のあらすじまとめ
※ネタバレを含みます。多分、ネタバレしても自分で何度も繰り返し観ないと理解出来ない映画だと思うので。
主人公、ドニー・ダーコは精神的に不安定な高校生男子。姉はハーバード大学を目指す浪人生、妹はダンスチームに所属しているアクティブで勝ち組側の姉妹を家族に持つ。ドニー・ダーコは過去に放火の容疑で犯罪履歴があり、出所した今でも精神的なカウンセリングを続けている。
ある日、ドニー・ダーコは夢遊病のような状態で銀色の仮面をかぶったウサギ、フランクの声に導かれゴルフ場に連れて行かれる。「世界の終わりまであと28日と6時間と42分12秒」とウサギは言う。気が付くとゴルフ場で眠ってしまっていたようなのだが、家に戻ると何やら様子がおかしい。
家は立ち入り禁止にされ、警察が事情聴取をしている。どうやら昨晩、ドニー・ダーコの家にジェット機のエンジン部分が落下してきたらしい。それも直撃したのはドニー・ダーコの部屋。もし家で眠っていたら…。
家の修理をする間、ドニー・ダーコ一家は警察が用意したホテルへ移り住んだ。その間もドニー・ダーコは学校へ行くのだが、学校には反社会的な小説を意欲的に扱う国語の教員や、反対にカリスマ道徳指導者に陶酔している几帳面すぎる程「正しい」道徳精神をたたき込んでくる教員もいたりと、穏やかではない。
ちょうどそのころ、ドニー・ダーコの学校に引っ越しをしてきたグレッチェン・ロスはすぐにドニー・ダーコと懇意の仲になり、そして交際を始める。彼女は昔、父親のドメスティックバイオレンスがひどく、母親を包丁で何度も刺されるという事件を体験した。その父親から逃れる為に名前を変え、この学校へ引っ越してきたという。今でも父親に追いかけられ、精神的に不安定な所がドニー・ダーコと通じるところだったのだろう。
彼女が出来たドニー・ダーコだったが、それでも時折精神的に不安定な状態が現れる。安定剤を飲んでいても、彼が不安を感じると銀色の仮面をつけたウサギが現れ、彼に破壊的衝動を起こさせる。彼は孤独を恐れるあまり架空の友人である銀色ウサギのフランクの言う事にはむかえないのだ。
彼は何度も銀色ウサギに会い、その都度、学校の下水道を破壊して洪水にしたり、不満を持っていたカリスマ的な道徳指導者の家を燃やしたりした。もちろん、この行いは悪い事ではあるのだが、結果的に家が燃えた事で、カリスマ道徳指導者の家に隠れ部屋があることが発覚し、その隠れ部屋には児童ポルノが大量に隠されていた。そのことでその指導者は捕まることになる。ドニー・ダーコは自分の行いを正当化する。
「世界の終わり」と発したウサギはタイムトラベルは信じるか?と話していた。もしかしたら世界の終わりとタイムトラベルは関係あるのでは?そのことについて理科の教師に聞いてみるとタイムトラベルには乗り物と時空の穴が必要だと説明され、一冊の本を手渡される。
「タイム・トラベルの哲学」
その著者はドニー・ダーコが通っている学校の元教員だったようだが、今では頭がおかしくなってしまい、毎日ポストをのぞいているだけの死神おばば。
「この世の生き物はみな孤独に死ぬ」過去にそう死神おばばに言われた事がリンクする。自分の身に起こっている事と本に書かれている事が類似している。世界の終わりと自分の死とタイムトラベル。ドニー・ダーコは銀色ウサギのやろうとしている事を理解しようと世界の終わりが訪れる前に死神おばばにタイムトラベルの事を聞きに行かなければならない。タイムトラベルさえ出来れば、世界の終わりを乗り越えられる。
ちょうどそのころ、姉がハーバード大学の受験に無事合格する。妹のダンスチームの付添でいない母親の代わりに家でパーティーをして祝おうと提案するドニー・ダーコ。ハロウィンの時期も重なって、家は仮装パーティー場になっていた。ちなみに母親は本来ダンスチームの付添ではないのだが、付添で行くはずの道徳指導の先生はドニー・ダーコが起こした火事によって捕まったカリスマの擁護をしなければならなくなった為、付添をドニー・ダーコの母親にお願いをしたのだ。
パーティーが盛り上がる中、恋人のグレッチェンが家にやってくる。彼女の母親が急に失踪した。これはきっとバイオレンスな父親が追いかけてきたのだと、ドニー・ダーコに救いを求める。ドニー・ダーコは世界の終わりがもうすぐやってくるのだと確信し、死神おばばの屋敷へ向かう。
恋人のグレッチェンを連れ、死神おばばの屋敷の中へ。しかし、そこに死神おばばの姿はない。代わりにいたのは強盗に入っていた同級生だった。包丁を突き付けられ身動きの取れないドニー・ダーコ。グレッチェンは首を絞めつけられ、外の地面へたたきつけられる。
そこへ車がやってくる。これは未来からの救世主が助けにやってきたのだと確信したドニー・ダーコ。車に乗っているのは銀色のウサギだった。その車をケイサツの車だと勘違いした強盗は逃げ出す。
車が屋敷の近くを通った時、車は突然変な動きを見せる。ポストをのぞきに行っていた死神おばばをよける為にハンドルを切ったのだ。死神おばばを無事によける事出来た車だったが、不運にもそこには地面に叩きつけられたままのグレッチェンがいた。
グレッチェンは車の下敷きになり、即死。
世界の終わりとは自分の死ではなく、自分の一番大切な人を失う孤独の訪れの事だったのだ。車を降りてきた銀色のウサギはハロウィンパーティーで着ていた衣装を取り、人をひいてしまった事に困惑している。この銀色ウサギはドニー・ダーコが創りだした架空の存在ではなく、実際に存在する姉の友人のフランクだ。
ドニー・ダーコは今まで孤独になることが怖い為に逆らう事の出来なかった銀色ウサギを射殺する。
そして翌日、ドニー・ダーコの精神を心配した母親は妹を連れ、予定よりも早く飛行機で帰ることになっていたのだが、その飛行機は空中で謎の爆発を起こす。
恋人の死と大切な家族の死。
「世界の終わりまであと28日と6時間と42分12秒」はまさにこの瞬間だった。
すべてを理解したドニー・ダーコは飛行機の爆発によって作られた時空の穴と車に乗って、過去にタイムトラベルする。
銀色ウサギに呼び掛けられる前のベッドに戻ったドニー・ダーコは笑う。「この世の生き物はみな孤独に死ぬ」。しかし、ドニー・ダーコが今死ぬことで、大好きなグレッチェンと母親と妹の命を救う事が出来る。自分のせいで死んでしまった人達、自分のせいで苦しんだ人達、それらの人たちがみな救われる。自分がもし生きていたらこんな世界だったのかという事を知ることが出来た。
彼の死は孤独だが淋しくない死だった。だから笑える。あれほど世界の終わりが、自分の死が、孤独が怖かったドニー・ダーコは笑った。
そして、ジェット機のエンジンがドニー・ダーコの真上に落ちる…。
…こんな感じのあらすじです。何度も観て書いてはいますが、もしかしたらかなりの主観が入っているかもしれませんし、見当違いな受け取り方をしているかもしれません。かなり理解するのが難しいタイプの映画なので、ぜひご自身でこの映画に触れてみてくださいませ。
是非、二回目に観る時は日本語音声+字幕でお楽しみくださいませ。
この映画はとにかく難解です。理解するのが難しい。僕は映画を観るポリシーとして、字幕で観る派なのだけれど、字幕はどうしても会話のスピードに合わせる為に内容が収縮される。文字で追うスピードと耳で聴きとるスピードでは断然耳で聴きとるスピードの方が速い為、字幕は意訳せざるを得ないのです。
ゆえに、こういう難解な映画を観る時は情報不足で理解しづらい状況になります。なので、ぜひ一度目は字幕で映画の雰囲気をそのまま楽しんだ後、二回目に観る時は日本語音声+字幕を表示させて、内容の補完を行ってください。
字幕で書かれている事と、日本語で話している事の内容がだいぶ違う所が多々あります。あぁ、ここはこういう意味だったのか!と再発見できます。英語を直接聞き取れれば一番いいんですけど、僕、バイリンガルじゃないんで。
この映画、登場人物の言っている言葉の真意を理解しないとかなり内容把握が難しいです。
でも、内容が理解出来始めると、いろいろな伏線が意味を成すようになっていて、何度も繰り返し見るたびに新しい発見が出来、まさにスルメイカ映画となります。
是非、何度も何度も観てください。この映画はすごく難しいですが、理解するとすごく切ないしみじみする映画になると思います。
映画『ドニー・ダーコ』 – まとめ
この映画、タイトルからして、「ドニー・ダーコ」と聞きなれない言葉。ドニー・ダーコは主人公の名前なのだけれど、その主人公の性格も難解。映画の内容も難解。でも、繰り返し見たくなってしまう不思議な魅力を持った映画です。
恐らく、一回観終わった時、
「なにこの映画。全く意味がわからないんだけど…。」
という気持ちに陥ります。でも、ぜひそこで思考をとめないで、ネットなどで解説などを探してみてください。
知るほどに好きになり、観るたびに面白さが増す、珍しいタイプの映画だと思います。
ぜひぜひ、一度リバースムービーというやつをご堪能くださいませ。
ではでは。『ドニー・ダーコ』のレビューでした。
…あ、
『卒業』で花嫁のエレーン役を演じたキャサリン・ロスがカウンセリングの先生役をやっています。教会から逃げ出した花嫁はひっそりとカウンセリングの先生をやっているんだなと勝手に同一世界の物語として想像してニンマリしました。
それと、この映画には続編があるみたいなんですが、クッソつまらないようなので観ないことにします。面白かったから繰り返し見られたけど、つまらないなら苦行になりそうなので…。
ドニー・ダーコ - 感想・評価
公開日:2001年01月19日
ジャンル:ヒューマンドラマ映画, ミステリー映画, SF映画
監督:リチャード・ケリー
出演:ジェイク・ジレンホール, ジェナ・マローン, メアリー・マクドネル