タクシードライバーという映画をご存じでしょうか?1976年公開のこの映画は、主演ロバート・デ・ニーロ、監督マーティン・スコセッシのゴールデンコンビ。
この映画の後に何度も組むことになるのですが、この映画でカンヌ国際映画祭の最高賞であるパルム・ドールを受賞しました。
アメリカン・ニューシネマの傑作とまで言われるようになった映画ですが、アメリカン・ニューシネマとはベトナム戦争に送られた若者兵士を中心にその心情を扱ったものと言われています。
この映画もベトナム戦争により不眠症に苦しみ定職に就く事が出来ない若者がタクシードライバーになり、その孤独と狂気を体現する内容になっています。
何よりもロバート・デ・ニーロのモヒカン姿!サングラスをかけたモヒカンがさまよい続けるのです。なんとも厨二病で魅力的でしょ?
そんな映画『タクシードライバー』のレビューをしていくことにしましょう。
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映画『タクシードライバー』 – ストーリー
公開日:1976年02月08日
ジャンル:犯罪映画, ヒューマンドラマ映画
監督:マーティン・スコセッシ
出演:ロバート・デ・ニーロ, ジョディ・フォスター, シビル・シェパード
夜が眠れずタクシードライバーになった元海兵隊のトラヴィス。彼はニューヨークの街を走り、腐敗した現代社会を嘆き、孤独や怒り虚しさを抱え徐々に心を蝕まれていった。誰一人として自分を理解してくれない事を悟った彼は自分の進むべき道を定め、自分という存在を世間に知らしめるべく拳銃を購入し、射撃の訓練と肉体を鍛える事に励んでいった。鏡に向かって拳銃を構える姿は狂人のよう。浄化作戦を実行に移す彼はモヒカン姿で大統領候補の演説を笑顔で聞いていたのだが…
もし、あなたにパスタ屋で『タクシードライバー』ってどんな映画?あらすじは?と聞かれたなら…
この映画は一言で言えば、ベトナム戦争後のアメリカの闇を切り取った映画なんだ。
海兵隊として戦争に行き、母国に帰ってきたトラヴィスはPTSDにかかり、不眠症に悩まされ定職につくことが出来ず、タクシー会社に就職した。
PTSDって言葉は当時それほど認知されていなかったけど、心的外傷後ストレス障害。簡単にいえば戦争によるトラウマのようなもので普通の生活が送れなくなる事。アメリカ政府はこのPTSDはベトナム戦争とは関係ないよって言い張って若者に対するケアなどを全く行わなかったんだよ。
現代で考えれば日本は戦争をしない国にはなったけど、たとえば大地震を体験した人もPTSDにかかって苦しんでいる人は沢山いる。募金を募って、食べ物や着るもの、布団などを送って、不足している物資を送って、復興の手助けをしてハイ終わりってわけには行かない。
食べ物に困らなくなっても、住む場所に困らなくなっても、今までと同じ生活が送れるようにみえたとしても、それでも心がもとに戻らずに苦しんでいる人がいっぱいいる。心のケアまで政府は目が届かない。
別に当時のアメリカのように見放しているわけじゃないのだろうけど、目に見えないものだからそこに充分な対策が講じられていないのが現状なんだと思う。まぁ、テレビで観た事の受け売りだから僕も偉そうな事言えないんだけどさ。
そんな心的外傷後ストレス障害を取り扱ったのがこの『タクシードライバー』っていう映画なんだと僕は思った。
まぁ、そんな時代背景とか知らなければただの厨ニ病をこじらせた若者の映画って感じに見えちゃうんだけど。ベトナム戦争もさ、この映画を観た後に調べてみたんだけど、アメリカが初めて“勝てなかった”戦争で、ティック・クアン・ドックって坊さんがガソリンかぶってアメリカ大使館前で焼身自殺したり、結構なショッキングな出来事が起きた戦争。
まぁ、そういう御託はいいか。とりあえず映画の話に戻そう。そういうベトナム戦争を体験した後、タクシー会社に就職したトラヴィスは、毎晩夜のニューヨークをタクシーで走らせて、客も選ばずただひたすら働いてた。
戦争後のニューヨークは性犯罪や暴力事件、麻薬の横行などが多発していて、タクシー業界も客を選んだりしてさ、黒人は乗せないとか、あの地域には行かないとか暗黙のルールみたいなのがあったんだよね。でもトラヴィスはそんなの構わず働いてたから、周りからは守銭奴とか揶揄されたりしてね。周りと上手く調和出来なかった。
トラヴィスの唯一の楽しみはポルノ映画を観に行く事だけでさ、まぁ、楽しみって事でもなかったんだろうけど、徐々に孤独に苛まれていくんだよね。
そんな時に、まるで天使のようなベッツィーという女性に出逢う。彼女は次期大統領候補のパランタイン上院議員の選挙活動を手助けする事務所で働いていて、毎日その様子をタクシーから眺める事が楽しみになってきた。
ベッツィーには同じ事務所に行為を寄せてくれる男性がいたが、どうにも退屈を感じないではいられずにいた。そんな時、トラヴィスから声をかけられ喫茶店でお茶をすることになった。不思議な雰囲気を漂わすトラヴィスにベッツィーは好意を寄せ、トラヴィスがデートに誘うと断ることをしなかった。
トラヴィスは喜び、ベッツィーをいっつも通っているポルノ映画に連れて行った。ベッツィーは酷く怒り、トラヴィスを置いて先に帰ってしまう。
トラヴィスにはなぜ彼女がそんなに怒るのか理解できなかった。それからというもの、電話をかけても無視され、冷たくあしらわれてしまう。トラヴィスはますます孤独にさいなまれるようになり、ベッツィーの事務所に押しかけ彼女に向かって「殺してやる!」と罵るほどになってしまう。
またもや目的や意味などを失い、無感情で夜の街をタクシーで走るトラヴィス。そんな時、一人の少女がタクシーに駆け込んでくる。「どこでもいいからとにかく早く出して」少女はそう言ったが状況を上手く飲み込めないトラヴィス。
すると知り合いであろう男がタクシーから彼女を引き下ろし、今のことは忘れろと20ドルをトラヴィスに向かって投げ込んで去っていってしまう。連れて行かれる少女。それを眺めるトラヴィス。その時、トラヴィスは何かを決意する。
知人を通じて裏ルートから拳銃を大量に買い込み、射撃の訓練と筋トレに励むようになる。そして拳銃を構え、鏡に向かってブツブツと何やらおかしなことを言い始める。「どうなんだ?俺か?俺に向かって言ってるのか?」
その後、何度かあの少女を見かけ、彼女が売春をしている事を知ったトラヴィスはお金を払い彼女と二人きりになった時に、彼女の名前と過去にタクシーに乗ってきた事の話をする。
アイリスと名乗った少女は学校に行っていない事、タクシーに乗っていた時は薬でラリっていた事を告げたが、トラヴィスが男はお前を利用する事しか考えてない、あんな男の元を離れ、家に戻り、学校に行くんだと説得しても聞く耳を持たない。しまいには呆れられてしまう始末。
家に戻り、アイリスに向けてお金を包み、一緒に手紙を書く。そして浄化作戦を実行する。
彼は髪の毛をモヒカンにし、軍服に身を飾り、パラタイン上院議員の演説に参加する。彼の演説にニッコリ笑顔で拍手を送るトラヴィス。上院議員がその場を退場する時を見計らって、彼に近づき胸元に隠してある拳銃に手をやる。
その瞬間、シークレットサービスに見つかり、捕まりそうになる。計画は失敗。
必死で逃げ去るトラヴィスはその夜アイリスの元に向かい、アイリスを利用している男スポーツをを射殺する。続いて、用心棒、アイリスを買いに来ていた客などを続けて射殺。
彼らの必死の抵抗で自らも拳銃で撃たれてしまうが、意識が残っているトラヴィスは自らの拳銃を自分の喉に向け引き金を引く。しかし弾切れ。警官が駆けつけ、危険人物として拳銃を向けられた彼は、怖じけることもなく自分の手をピストルのようにして、自分の頭を2回撃つ。
マスコミはトラヴィスを少女を裏社会から救った英雄として取り上げ、家に戻ったアイリスの両親からは感謝の手紙が届いた。
重症から復帰したトラヴィスは再びタクシードライバーとして働き、一人の女声を乗せる。それは彼の有志を雑誌で読んだベッツィーだった。ベッツィーは彼に話しかけて来たが、彼女を車から降ろすと、料金を取らずに立ち去るのであった。
そしてまた夜の街をさまよい続ける。おしまい!
どうだろ。ささっとあらすじ説明したけど、どんな映画かわかった?まぁ、この映画はさ、雰囲気がすごくて、なおかつ音楽も印象的だからさ、あらすじうんぬんよりとにかく実際に観て、肌で感じる系の映画だと思うんだよね。
そーだな。『ボーイズ・オン・ザ・ラン』みたいな映画が好きなら、この映画が好きかもしれない。
アイアムアヒーローの花沢健吾が書いている漫画が原作でさ、GOING STEADYのボーカルが主演の映画があるんだよね。それもさ、元カノの男に決闘を挑む時に髪の毛をモヒカンにするんだけど、多分この映画の影響を受けていると思うんだ。
色々と影響を与えた映画みたいで、この映画のアイリスはさ13歳の時のジョディー・フォスターが演じてて、すげー可愛いんだけど、その少女に本気で恋をしちゃった男がさ、実際にレーガン大統領暗殺を企てて未遂事件で逮捕されちゃうぐらい。
ま、しかもこの事件、犯人は後に無罪になってるんだけどね…。2016年に釈放されているし。完全に蛇足だけど。
…そんな事を『タクシードライバー』についてジェノベーゼでも食べながらパスタ屋で話すと思います。
『タクシードライバー』の名言
健康なんて気の持ちようだ。
どんな権力者でも元通りに出来はしない。
『タクシードライバー』のおすすめポイント
・音楽と雰囲気が非常にマッチしたくらーいくらーい映画だと思う。色々と考えされられた映画でした。
映画『タクシードライバー』 – まとめ
あまり感想の所で書きませんでしたが、この映画の中でサックスの存在感が半端ないです。
映画って色々あると思うけど、ここまで映画の内容と音楽がマッチした映画は珍しいと思いました。音楽、歴史、人間。色々なものが混ぜ合わさって出来ている映画です。1976年と古い映画ですが、Amazonで評価がクッソ高いのもうなずけます。
ちなみに、すごく個人的な事情ですが、ショックな出来事がありました。それが今でも受け入れられず、このレビューも中々書く気力が湧きませんでした。なので、この映画を観てから結構時間が経っています。
しかし、その分、充分にこの映画の意味を考えて書けたと思っています。
映画を観終わった直後の感想は僕自身も、厨二病かぁ…ってな感じでしたので。それでも色々なレビューを読んだり、ブログ読んだり、Wikipediaで調べてから再びこの映画をもう一度観てみると最初に受けたイメージとは全く違った映画に思えてきたのです。
でもまぁ、暗い映画ですね。僕の今の暗い気持ちにはずっしり重くのしかかってきました。
うん。
音楽もすごいし。とにかくサックスが耳に残る。映画の雰囲気を一層引き立ててる。あぁ。人の死とは、あまりに唐突で、哀しみさえ、追いつかないでいるよ。
ではでは『タクシードライバー』でした。
…良かったら、落ち込んでいない時に観てくださいませ。
タクシードライバー - 感想・評価
公開日:1976年02月08日
ジャンル:犯罪映画, ヒューマンドラマ映画
監督:マーティン・スコセッシ
出演:ロバート・デ・ニーロ, ジョディ・フォスター, シビル・シェパード
タクシードライバー
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ストーリー - 75%
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キャラクター - 85%
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演出 - 80%
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映像 - 75%
-
音楽 - 95%
82%
映画レビューまとめ
Amazonで評価がすげー高いのもうなずける。この映画の雰囲気半端ない。ただ、今の感覚だけで観ちゃうと厨二病の映画だわこれって感じに思えちゃうかもしれない。時代を切り取った映画なので、時代背景を理解してから観ないといけないのかも。