ストリートファイター 暗殺拳という映画をご存じでしょうか?2014年にYouTube上で公開されたイギリス映画です。
日本ではヒューマントラストシネマ渋谷でYouTubeで公開されたエピソードをまとめたやつが劇場公開されました。
正直、今までもいくつかストリートファイターII、いわゆるストIIの実写化はありましたが、他の人気作品の実写化同様どれもこれも求めているものと違うものばかりでした。
「所詮、実写化は人気に便乗した商業的なものでしかないんだな…」と諦めていた所に、この映画に出会いました。
ストリートファイターIIに対する愛しか無い。
イギリス人が作ったということで言語が変だったりはするけれど、そんなのは些細なこと。
実写化に必要なものは作品に対する愛なんだと実感させてくれる作品です。
作品の良し悪しを決めるのは予算ではなく愛なのです。人が愛情を込めて作り上げた作品は観ていて心地が良い。
ということで、映画『ストリートファイター 暗殺拳』のレビューをしていくことにしましょう。
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映画『ストリートファイター 暗殺拳』 – ストーリー
公開日:2014年05月23日
ジャンル:アクション映画, 冒険映画, ヒューマンドラマ映画
監督:ジョーイ・アンサー
出演:伊川東吾, クリスチャン・ハワード, マイク・モー
和歌山の寺で修行をするリュウとケン。彼らは実力がついて来たものの師匠から「波動」の力を教えてもらえず苛立っていた。彼らの師である剛拳は暗殺拳の達人であり伝承者であったが、暗い過去があった。それは若き頃一緒に修行をした弟、豪鬼のこと。強さを求めるあまり“殺意の波動”に飲み込まれてしまった豪鬼。弟のような格闘家を生み出さない為に本当に「波動」を二人に教えていいものか迷っていた剛拳だったが…。
もし、あなたに中華料理屋で『ストリートファイター 暗殺拳』ってどんな映画?あらすじは?と聞かれたなら…
この映画は一言で言えば、“ストII映画史上最強のファンムービー”なんだ。
ストIIを好きな人がストIIを好きな人にストIIへの愛を見せつける為に作られたと言っても過言ではない。
ストIIの波動拳。まさに、ドラゴンボールのかめはめ波と双頭をなしたと言ってもいいほど子供たちの夢だったと思う。
ストII世代の誰もが、「あれ?もしかしたら今日なら撃てるんじゃね?」と両手を前に突き出した事があるはず。
僕が小学校に入学にした頃、ちょうどファミコンからスーパーファミコンに移り変わった頃で、まだスーファミがある家は少なかった。
スーファミを持っている子の家に集まり、みんなで順番っこで遊ぶ。そのソフトがストII。
必殺技の出し方もわからずパンチとキックをひたすら連打するだけで勝てたエドモンド本田は僕のヒーローだった。
そして同様に百裂脚が撃てる春麗は僕らのアイドルだった。
友達のおばちゃんがいない頃を見計らって、みんなでスタートボタンを連打してスピニングバードキックをスロー再生していたのを思い出す。
学校で文字を書くことを習うと、友だちに借りた攻略本片手に波動拳、昇龍拳、竜巻旋風脚の文字とともにコマンドをメモった日々。
友達の家ではしゃぎすぎてそのメモがクシャクシャになっていた時は大泣きした。ただ、左の親指がいくら痛くなっても泣かなかった。何度マメを潰した事か。
リュウが波動拳を撃つのが先か。僕が波動拳を撃つのが先か。ストII初心者の僕はゲームでも現実でも波動拳に夢中でした。
そんな少年時代を送った僕ら世代は何度もストIIのメディア化に期待し、失望してきた。
僕らに残ったのはストIIへの恋しさとせつなさと心強さだけ。↓R↑LYBXAと心のコントローラーで打ち込んだって、僕らの求めた実写映画は出現してくれなかったね。
安室奈美恵に憧れた人がアムラーと呼ばれ彼女を真似したように、憧れへの究極的な行動は真似すること。
手の届かない存在を目の前に具現化すること。
それなのに提供される実写映画はどこにも弱パンチ、中パンチ、強パンチの再現がない。金だけかけた宣伝費に無駄に豪華なキャスト、捻じ曲げられたキャラクター設定。
なんとなくいい感じの話になってるでしょ?的な映画ばかり。
そうじゃないんだ。そうじゃないんだと嘆き続け、気がつけば20年以上経ってた。
そして今回偶然発見した『ストリートファイター 暗殺拳』。
Amazonプライムビデオで無料で観れたから特に期待もせず再生ボタンを押してみると、そこにはゲームから飛び出してきたかのように完璧に模写されたケンが!!
あ!今、弱パンチ出した!あ!!今→中パンチ出した!!
と観ているこちらが嬉しくなるほど、細かい所に凝った作り。
リュウがなぜ英語を喋っているのか?そりゃー世界各国回って強いやつと闘うんだから英語の勉強しているんだろ!…と、勝手に解釈。
その昔バベルの塔というのを人間が作ってしまった報いなんだろーな、と信者妄想ばりの解釈をして、とにかくケンとリュウがゲームから飛び出して来たその姿に感動してた。
ストーリー的にはゲームのプロローグ的な話。
まだリュウとケンが一緒に和歌山の道場で暗殺拳の達人、剛拳を師匠に修行をしていた。
しかしいくら修行をしても暗殺拳の極意“波動の力”を教えてくれる気配がない。
業を煮やしたケンは師匠に言い寄ると師匠は昔の苦い経験を思い出す。
剛拳には豪鬼という弟がいた。彼ら二人は轟鉄を師匠に暗殺拳を学んでいた。
二人の性格はリュウとケンによく似ていて、強さの中に冷静さを秘める剛拳はリュウに、常に強さだけを求める豪鬼はケンにそっくりだった。
一緒に学んでいくうちに豪鬼は強さを求めるあまり、師匠から禁止されていた“殺意の波動”に手を染めてしまう。
“殺意の波動”は徐々に豪鬼の体を蝕んでいき、その危険さを悟った師匠の轟鉄は豪鬼を破門にしてしまう。
豪鬼は自分の道を行くべく、兄の剛拳や自分を慕ってくれていた轟鉄の娘さやかと別れる決意をする。洞窟で一人修行を続ける豪鬼。
ある日、水に写った自分がもはや自分の知っている自分の顔ではない事を知った時、師匠の言い分が正しい事を理解したが時すでに遅し、殺意の波動に完全に心を奪われてしまった。
人が変わった豪鬼は轟鉄の目の前に現れ、決闘を申し込む。
轟鉄は豪鬼を止める為、捨て身の技『滅・波動拳』を撃ち込むが虚しくも殺意の波動の頂点に位置する瞬獄殺の前に敗れてしまう。
轟鉄の体は破壊され、豪鬼の背中にはさやかと別れる時に彼女が“不滅の栄光”の意を込めて送った「天」の文字が焼き付いていた。
轟鉄を失った剛拳は暗殺拳の伝承者になったが、妻になったさやかは目の前から姿を消した。
その数年後、謎の老人から彼に預けられた一人の子供をリュウと名付け、自分の親友の子供ケンと共に育てあげる事になるのだが、剛拳にはそのような過去があったため、二人に本当に波動の力を教えて良いものだろうかといまだに悩んでいた。
しかし、時代とともに教えも先に進むという師匠の言葉を思い出し、二人に波動の力を授ける決意をする。
だがしかし、そんな時、剛拳の目の前に豪鬼が現れるのだった…。
まぁ、あれだよね。ゲームでは、ストーリー部分は連打で読み飛ばしちゃうじゃん?
あくまでもゲームの中心は格闘の部分で、深みを与える為にストーリーが用意されたみたいな。
だからこの映画もストーリーはとりあえず無難にまとまっているけど、やっぱりこの作品の見どころはバトルパートだと思うんだ。
リュウとケンとの闘い、豪鬼と轟鉄の闘い。
本当に低予算なりにSFXを駆使しつつ、愛情をプラスして実写の中で出来る限りのクオリティにまで昇華させてる。本当にそれがすごい。
気になった点は二つだけ。リュウとケンは初代ストIIではほぼ同機能で唯一の違いは巴投げと地獄車だったはず。
それから次第に作品を追うごとに差別化されていくんだけど、ケンの投げが地獄車じゃなかった事。…やっぱり難しかったのかな。
二つ目は轟鉄との闘いで滅・波動拳をすり抜けて瞬獄殺を決めたんだけど、確か瞬獄殺は飛び道具を無効化出来なかったはず。
なので滅・波動拳を撃とうとする瞬間に瞬獄殺が炸裂するって感じにしてくれた方がリアルだったかな…と。
でもそんなのはただの粗探しに過ぎないし、充分過ぎる程の再現度で満足しているからほぼ100点をあげたい。
まぁ、レビューを読むとストーリーのラストが雑過ぎるっていうのとリュウの日本語がカタコト過ぎて集中できなかったってのがマイナスポイントで挙げられるレビューのほとんどだけど。
僕はそれ以上にバトルパートのアクションに感動したから、そこは目を瞑りたいと思います!
ぜひこのクオリティを保ちつつ、ブランカの物語を観てみたい所だけど、やっぱり難しいだろうなぁ。
この映画の良かった点は他の映画と違ってキャラクターを出しすぎなかった所も大きいと思うんだ。
リュウとケン、そして豪鬼に絞ったからこそのクオリティの保持だと思うから、続編は観てみたいと思うけど、期待はしないでおこう。
あ、ちなみに監督は俳優さんで、殺意の波動に目覚めた後の豪鬼をやってる人。
むっちゃ筋肉すごい。そして豪鬼が似合いすぎて笑った。
マジでストII好きなんだろうなって思ったよ。ストII愛がある人ってもうそれだけで観てて嬉しくなるよね。
僕は今でも動画でちょこちょこストII関連のものを観るんだけど、オススメを紹介しておこう。
僕はゼロII止まりでストIIIはほぼやってないんだけど。どれもストIIに対する愛が伝わってくるし、この人達の人生はCAPCOMがストIIを作ってなかったらまた違っていたんだろうなぁって思うとやっぱりCAPCOMさまは偉大だ。
ま、かなり人を選ぶ作品だし、ストIIやってなかったら全く意味不明な作品だと思うけど、興味が湧いたらストIIについて調べたりしてみてよ。瞬獄殺でさえWikipediaに書かれているからすごいよなぁ(笑)
…そんな事を『ストリートファイター 暗殺拳』について空芯菜炒めを食べながら中華料理屋で話すと思います。
『ストリートファイター 暗殺拳』の名言・心をざわつかせた言葉
わしを裏切るなら、死を覚悟して裏切れ。
わしの情けにも限りがあることを忘れるな。
もし戻ってきても弟子でも家族でもない。その時は敵として戻ってこい。わかったかー!
俺達の進む道がどっかで重なり合うまで、さらばだ剛拳。修業に励み強いままでいろよ。
師範の教えは神の言葉ではない。教えも時代とともに先へ進むのだ。
自らを格闘家と呼べるのは、正面から死と敗北に向き合い、それらを克服した時である。
『ストリートファイター 暗殺拳』のおすすめポイント
・とにかくバトルシーン!言葉は忘れ、アクションに酔いしれるのだ。
・SEも実際のゲームの音を使っているだけあって、バッチリ。
・リュウのハチマキが赤くなった理由、コテが茶色くなった理由など細かい所までこだわっているのが本当に嬉しい。
映画『ストリートファイター 暗殺拳』 – まとめ
若い頃を思い出し、思い出があふれ出てきました。
あの頃、僕は学級委員をやっていて、先生本人のイジメにより学校に来なくなってしまった事など露知らず、先生からH君の家に行って学校に来れるようにしてくれないかとお願いされていました。
H君の家には兄貴が買ったというネオジオがあり、一本5万円もするソフトが沢山。
僕はH君と一緒に龍虎の拳をやり、「『覇王翔吼拳』を使わざるを得ない」というセリフを先生に見立てた敵キャラに使って盛り上がっていたのを思い出します。
あの頃はネットなどもなく、ケータイもなかった為、引きこもるには相当な孤独感に襲われていただろうし、ストレスのはけ口もなかった。
Hくんの家には格闘ゲームしかなかったのも何か意味があったのかもしれない。
給食を食べるのが遅いという理由で先生に嫌がらせを受け続けていたH君。
あまり感情や意見を表に出さない性格でしたが、格闘ゲームをやっている時だけは雄弁でした。格闘ゲームは僕らの大切なコミュニケーションツールだったのです。
ストII、餓狼伝説、サムスピ、龍虎の拳など格闘ゲームの黄金期だった時代。ゲームが変わっても変わらずに一緒に盛り上がれる友達。
ゲームの事なら何でも知っているHくんが僕にはかっこよく見えました。彼が使うシャルロットは優雅さ以外の何者でもなかった。
僕には絶対に出せない龍虎乱舞を必ずラスト技として使うポリシーを持ったH君。
アンディ・ボガードの斬影拳でゴリゴリ削ってくるH君。ザンギエフに美学を見出していたH君。
彼が学校に来ることはなかったですが、ゲームが僕らを繋いでくれていた。
「学校に来ようよ」という言葉は言いづらかったけど、「遊びに行っていい?」は言いやすかった。
…そんな事を思い出した『ストリートファイター 暗殺拳』でした。
すべての格闘ゲームの基礎を作ったストII。それをここまで再現している映画に愛を感じます。
ストリートファイター 暗殺拳 - 感想・評価
公開日:2014年05月23日
ジャンル:アクション映画, 冒険映画, ヒューマンドラマ映画
監督:ジョーイ・アンサー
出演:伊川東吾, クリスチャン・ハワード, マイク・モー
ストリートファイター 暗殺拳
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ストーリー - 55%
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キャラクター - 85%
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演出 - 95%
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映像 - 95%
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音楽 - 65%
79%
映画レビューまとめ
観る人を選ぶと思うし、作品としてはB級映画に属するものだとは思うのだけれど、実写化する人たちにはぜひ見習って欲しいと思えるほどの原作愛。実写化は妥協の産物だと思ってたし、それらは「観てみたい」であっても「観たい」ではなかった。しかし、もしこのような作品であるならば是非とも続編が「観たい」。