グッドフェローズという映画をご存じでしょうか?1990年公開の犯罪映画なのですが、犯罪映画と言えばこの人、マーティン・スコセッシ監督です。
そして「マーティン・スコセッシ監督と言えば!」な役者、ロバート・デ・ニーロが出演しています。
ちなみにこの犯罪映画は、伝記物でして、1943年から2012年までに実在したヘンリー・ヒルという男を扱った物語です。
このヘンリー・ヒルという男は、11歳の時にマフィアの使い走りをしていたぐらい若くしてギャングになった男。
この映画の中でも「物心がついた子供が野球選手や消防士にあこがれるようにマフィアの一員になる事を夢見ていた」と描かれています。
そんなヘンリー・ヒルをレイ・リオッタが演じていますが、彼の出世作になったようです。ハンニバルで自分の脳みそを食べさせられる11年程前ですね。11という数字がなぜかマッチする。
彼はぶっ飛んだ役が良く似合いますが、今作でもなかなかに狂気じみています。まぁでも、本当に狂気じみているのは、パッケージの右に映っているの男(ジョー・ペシ)なんですがね…。
ということで、映画『グッドフェローズ』のレビューをしていくことにしましょう。
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映画『グッドフェローズ』 – ストーリー
公開日:1990年09月19日
ジャンル:伝記映画, 犯罪映画, ヒューマンドラマ映画
監督:マーティン・スコセッシ
出演:ロバート・デ・ニーロ, レイ・リオッタ, ジョー・ペシ
ヘンリーは物心が付いた時から当然のようにマフィアになりたいと思っていた。11歳でマフィアの手下になり界隈の顔役ポール・シセロの元で働くようになる。生きる伝説のジミーや、すぐキレるトミーとも仲間になり本格的にマフィアの道を進み、42万ドルの強奪事件も成功する。さらに10年後には600万ドルの強奪にも成功したが、関わった仲間たちを口封じのために殺害。ヘンリーはポールの組織ではタブーとされる麻薬売買にも手を出し始めた。実在したヘンリー・ヒルという男の出世から没落までを描くギャングの日常と裏切りの映画…
もし、あなたにイタリアンレストランで『グッドフェローズ』ってどんな映画?あらすじは?と聞かれたなら…
この映画は一言で言えば、“The 悪!な映画”なんだ。スカーフェイスのような組の抗争のようなものは出てこないし、ドンパチも少ない。
ただひたすらにマフィアの生々しい生活が描かれているだけなの。
どのように金を儲け、どのように人を殺し、どのように女を手に入れ、どのように時間を過ごすのか。
あまりにも自然すぎて、あれ?この人マジでマフィアなのかな…。え?これ演技でやってるんだよね?この人俳優さんなんだよね?と、現実と映画の中の話の境目がよくわからなくなってくる。
有名どころで言えばロバート・デ・ニーロが生きる伝説のジミー役で出ているんだけど、彼の雰囲気は前回見た『アンタッチャブル』のアル・カポネ役とはまた違った独特な怖さを漂わせている。
それは流石!って感じなんだけどさ、それよりもねトミー役の人、ジョー・ペシの演技がヤバイんだ。
最初はさ、チビで声が高くて中々にキャラの濃い感じだったから哀川翔かよ!…とか、軽く観てたのね。
でもこの映画が進むに連れてこの人の狂気じみたキャラクターが怖すぎて、マジでその筋の人なんじゃないかと思ってきた。
この人を観ていると「イタリアに行ったらマフィアって本当にいるんですか?なんて聞いちゃいけない。だって相手がマフィアじゃない可能性がないわけじゃないんだから」ってテレビで言ってたのを思い出す。
日本人はマフィア、マフィアって簡単に言うけど本場に行ってそんな事言ってたらマジで殺されかねないんじゃないか?
だって、マフィアの幹部は幹部以外の人間なら誰を殺しても良いという権限が与えられているとかいうのをこの映画の中で言ってたし。
この映画の中でも、鼻くそをほじる感覚で人を殺す。ちょっとコンビニ行ってくるわぐらいの感じで。ダンスを踊れと人の足を撃ち、少しでも口答えをしたら少年でも撃ち殺す。
僕はさDVDのパッケージ見ててっきりこの映画の主人公はロバート・デ・ニーロだと思ってたのね。
でもそうじゃなくてレイ・リオッタが主人公。レイ・リオッタが演じるヘンリー・ヒルという実在したギャングが主人公なのです。
彼は小さい頃に誰もが野球選手になりたいと憧れるかのようにマフィアになりたいと憧れていた。
そして実際、11歳から街を牛耳っていたポールの元で働くようになる。
主にジミーという生きる伝説にくっついて学び、ジミーに言われてトミーという同い年ぐらいの男の子と組んでタバコの密売などを手伝っていた。まぁ、さっきも言ったけど、この生きる伝説がロバート・デ・ニーロ。
ヘンリーはそのまま大きくなりジミー、トミーと共謀し国際空港で42万ドルの現金を盗み出すことに成功。
実生活も潤いのあるものとなり、カレンという女性と結婚する。
カレンはヘンリーの仕事をよく知らなかったけれど、普通では体験出来ないような事ばかりを経験させてくれるヘンリーを好いていたし、ヘンリーの性格も好きだった。
しかしヘンリーは結婚をしてから家に帰らない事も多く、愛人も作っていた。
その事を知ってからもカレンはヘンリーに当たる事があっても離れる事は出来ない。彼が本当に好きだったんだね。
彼の正体を知ってからも、彼が刑務所に入ることがあっても、ヒストリーを起こしつつも裏切る事はしなかった。
ヘンリーの素行は刑務所に一度入った頃から徐々に荒れはじめ、麻薬に手を出し、ポールに嘘を付きながら売買で巨額の金を手に入れる。
そして600万ドル強奪事件を皮切りに破滅への道を進んでいく事になる。
ジミーは強奪事件に関わった仲間たちを口封じのために殺しはじめ、トミーは幹部殺しの罪で組織に消された。
ヘンリーは麻薬の密売の罪で捕まり、保釈金ですっからかんになり、ポールからも見放され組織を破門になった。
組織をはみ出たものは殺される。ずっと面倒を見てくれていたジミーでさえも自分を消そうとしている。行き場をなくしたヘンリーは…。
実話を元にしたものだから、Wikiか何かで調べればこの映画の結末も書いてあるんだけどさ、この映画はとにかくマフィアを全く美化してないの。
『スカーフェイス』を観た時はさ、マフィアとかギャングってかっこいいなぁ!なんて思うシーンがいくつもあった。
あの映画の主人公も全部を手に入れたはずの人生が麻薬で身を破滅させていくっていうピカレスク・ロマンのテンプレみたいな感じだったけど、こっちのヘンリーも話的には同じじゃん?
強奪事件で現金を手に入れ、ウハウハ。綺麗な奥さんもいるし生活にも困らない程のお金もある。
それでも麻薬に手を出し、徐々にやつれはじめ、逮捕され、組織にすら見放され、自分の命ですら狙われる立場にっていう転落人生。
なのに、こっちのヘンリー・ヒルには全くかっこよさがない。
観終わってからも、今まで観た映画の中で一番のクズだったんじゃないか?っていうぐらいひどい主人公のイメージで終わった。
でもだからこそ、マフィアの実情をありありと伝えている映画として観れてすごく面白かった。
もちろんジャンルがジャンルだから、こういう映画が嫌いな人にとっちゃ何が面白いのかわからないっていう感じだとは思うけど。
この映画を観ればね、間違ってもマフィアに憧れなんて抱かないと思うね。
そういった意味じゃピカレスク・ロマン映画の逆を行ってるよね。
ただあれだね、主人公がクズでも面白い映画ってあるんだなぁっていう新しい発見があった。
あと、この映画、カメラワークもなかなか良くてさ。
ロバート・デ・ニーロが誰かを見つめている引きの絵から徐々にアップになっていく場面で彼が頭の中で何を考えているのか伝えるシーンとか。
主人公と彼女が長い行列に並ばずに裏口から中に入って最前列に座ってショーを観るっていうシーンもカットを切らずにワンカットで全部撮ってるところとか。
ああこういう感じで美味しい所をつまむのがマフィアなのかってTPS(Third Person shooter)のゲームやっているような目線でわかる。
…という事で『スカーフェイス』とは全く別のタイプではあると思うけど、これはこれでギャング映画の名作だと思うんだよね。
かなり学ぶ所が多い映画だ。ゲス目線でね。
あと、なぜかこの映画、料理をするシーンが多い。ニンニクをひたすら薄く切るボスとか。麻薬の粉を混ぜつつ、トマトソースを焦げないように混ぜるシーンとか。
それとジミーがヘンリーを消しにかかってきたラスト近くのファミレスのシーンでメガネをかけるんだけど、その時のロバート・デ・ニーロの目がむっちゃデカくなって、明らかに不自然だろって思うのに、そこにすら恐怖を感じてしまう演出ね。
あれは一度観てもらいたい。スクショタイムかよっていうぐらい一枚絵で観ると笑えそうなのに、動画で観ると怖いっていう。
そういう細かい所も含めて、2時間半弱の映画だけど何度も観たくなる良作だと僕は思ったね。
監督自身はこの映画が痛く気に入ったみたいでね、ジミーとトニーのコンビで『カジノ』っていうマフィア映画を後に作っているみたいだ。僕はまだ観てないんだけど。
ま、興味が湧いたら調べたりしてみてよ。トニー役のちょー怖い人、ジョー・ペシはこの映画でアカデミー助演男優賞を取ってるんだってさ。そりゃーそーだよね。マジで怖いもん。
…そんな事を『グッドフェローズ』についてトマトとニンニクのパスタをフォークでグルグルしながらイタリアンレストランで話すと思います。
『グッドフェローズ』の名言・心をざわつかせた言葉
暗黒街こそ俺の世界だ。カスどもばかりの街でデカい顔ができる。
男らしいぞ。大切なことを2つ学んだわけだ。いいか。“仲間を売るな”“決して口を割るな”
まともな稼業はアホだ。つまらない仕事でケチな金をもらい、毎日地下鉄で通う奴らはクソ食らえだ。タマも付いてねえ腑抜けだ。欲しい物は奪い取る。文句をたれる奴はたたきのめせば黙る。余計なことは考えない。
殺しは当然のことだった。秩序を守る唯一の手段。組織からはみ出た者は消される。時には、はみ出さなくても消される。殺しが癖になるからだ。つまらない口論ですぐに誰かが死ぬ。
土曜は女房サービス。金曜の夜は愛人と遊ぶ。
慌てないで。世の終わりじゃないわ。
組織の奴らは前触れもなしに相手を殺す。何も言わない。映画みたいに言い争いなどしない。殺し屋は親しげにほほえみながら現れる。最も助けが必要なとき、力になってくれるべき者が冷酷に忍び寄る。
電話で何でも手に入る。車は使い放題。街中にある隠れ家。週末に3万ドルも賭け、派手に勝ち金を使ったり、胴元に払ったり…。そんなこと何でもなかった。金がなくなりゃ盗みに行けばいい。何でもやった。デカを金で買い、弁護士や裁判官も買収した。誰もが金で動き思いどおりになった。だが、もう終わりだ。
『グッドフェローズ』のおすすめポイント
・決して美化しないマフィアの醜悪さ、卑劣さ、貪欲さなどをまじまじと感じられる演出。
・大きなストーリーもなく、ドンパチもないのでワクワクドキドキはしないけれど何故か飽きもせず2時間半さらっと観れてしまう不思議な魅力を持った映画。
・ラストの主人公のカメラ目線のゲスさ加減が半端ない。
映画『グッドフェローズ』 – まとめ
『スカーフェイス』以降、同じような映画を観たいと『アンタッチャブル』、『グッドフェローズ』と観ましたが、全てマフィアを扱っている映画なのに全部タッチが違って、それでいて全てが面白いっていうね。
結局の所、唯一無二な存在の映画だから評価されているんだろうし、同じような映画を探すなら、同じ映画を何度も観たほうがいいのかも。
とりあえず、もう少しピカレスク・ロマンなギャング映画を漁ってみますが、そろそろ他のジャンルも観てみたくなってきたな。
それにしてもロバート・デ・ニーロって本当に何でも出来るんですね。
色々な役をやっていて、全部ちゃんと別人に見える。
もし僕がマフィアの役をやったら、かなりステレオタイプなイメージのマフィアしか演じられないと思うのですが、大物から中間管理的な立場から全部分けて演じられる。本当にすげー。
ではでは、映画を観終わった後でもなぜ『グッドフェローズ』なんだ?と解説を観てもタイトルの意味が理解出来ない僕でした。
…個人的にはロバート・デ・ニーロが公衆電話を破壊する所が一番好きなシーンです。
あ、それと1時間30分58秒らへんに『バッファロー’66』のヴィンセント・ギャロが一瞬出てます。
Wikiに名前が載ってたのでマジで?どこに出てたの?って感じでしたが、ほんの一瞬です。
グッドフェローズ - 感想・評価
公開日:1990年09月19日
ジャンル:伝記映画, 犯罪映画, ヒューマンドラマ映画
監督:マーティン・スコセッシ
出演:ロバート・デ・ニーロ, レイ・リオッタ, ジョー・ペシ
グッドフェローズ
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ストーリー - 65%
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キャラクター - 85%
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演出 - 90%
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映像 - 85%
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音楽 - 75%
80%
映画レビューまとめ
主人公は全く魅力がなくクズ。言ってる事も道徳の欠片すらない。なのにすげー面白い。このクセになりそうな不思議な魅力を持った映画をぜひ一度観ていただきたい。