キューブという映画をご存じでしょうか。1997年公開のカナダのホラー映画です。
この映画の面白い所は、一つの部屋(キューブ)を使った出来事だけで面白いホラー映画にしている所。
元々は監督のヴィンチェンゾ・ナタリが1996年に制作した『ELEVATED』っていうエレベーターで起こった短編映画が原点で、それを長編に膨らませたものです。
“ソリッドシチュエーションスリラー”の代表なのだそうで、この映画がカルト的人気を持った事で類似作品が沢山出回りました。
ちなみにキューブ自体も続編が出たのですが、ヴィンチェンゾ・ナタリ監督ではなくなったのが残念なところ。
という事で、アイディア一つで面白くなる映画『キューブ』のレビューをしていくことにしましょう。
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映画『キューブ』 – あらすじ
公開日:1997年9月9日
ジャンル:ヒューマンドラマ映画, ホラー映画, ミステリー映画
監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ
主演:ニコール・デ・ボア, モーリス・ディーン・ウィント, デヴィッド・ヒューレット
目を覚ますとそこは謎の立方体空間。なぜこんな所に閉じ込められているのか。扉は各面にひとつずつ付いており、どの部屋に移動しても同じような立方体空間が続く。そして間違った部屋に入ってしまうとトラップが発動し死んでしまう。同じように閉じ込められた6人は力を合わせて脱出を試みるが…
映画名作レビュー戦記シネマネオン!-キューブの巻-
前回までのシネマネオンは…
館見放題
とある映画館でポスター貼りのアルバイトをしていた館見 放題。「正義のための戦いなんてどこにもないのだ、正義はある日突然逆転する、正義は信じがたい」と言いながら映画ランキングと興行収入を参考におすすめポスターを入れ替えていたが、その作業中、謎の組織ノーモアーズに襲われ記憶と顔を盗まれてしまう。何も思い出せない館見。彼は自分を取り戻すため、引き込まれるように映画館に入り『キューブ』を観ようとしたのだが…
映画『キューブ』 -内容紹介-
ち、畜生!なんだったんだ。あの赤い顔の男は…。何かを思い出せそうだったのに、映画館から追い出されてしまった。『キューブ』とは一体どんな映画なんだ…。
一言で言えば、“極限状態に追い込まれた人間を撮った映画”だな。ヴィンチェンゾ・ナタリ監督の1997年の作品さ。
呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン。レビューロボ、シネマネオンだ!
まぁまぁ、落ち着きなさい。君は、モーリス・ディーン・ウィント主演の映画『キューブ』が観たかったんだろう?
そうだ。『キューブ』を観れば何かを思い出せそうな気がするんだけど。
では、『キューブ』上映1時間30分と書かれたその映画アプリのボタンを押してみなさい。期間限定、登録無料。今だけお得。
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アジャラカモクレン、キューブ、テケレッツのパー
うわああーー!『キューブ』の映像が頭のなかに広がっていくぅぅぅぅうう!!
映画『キューブ』 -解説-
映画『キューブ』の設定は本当にシンプル。登場する役者は7人しかいない。殺し合うデスゲームとも違う。
そう。複数の人間が箱に閉じ込められ、その理由は誰もわからない。でもとりあえず道は用意されているんだ。
道があれば進んでみたくなる、ボタンがあれば押してみたくなるのが人間だな。
上下左右前後すべてに扉があり、どこを開けても同じように見える箱。
実際、この映画はひとつの箱のセットだけで撮影されたらしいね。色を変えたりして複数に見せる手法だってさ。
脱出するためにはとにかく移動しなければいけないけれど、間違った箱を選んでしまうとトラップによって死んじゃう。
色々と頭を使いながら気をつけて移動していくうちに自分と同じような状況の人間に出会い、全部で6人集まる。この6人と最初のプロローグで死んじゃう1人しか出てこないんだ。この映画、本当に。
低予算作品なんだってね。セットは1つ。役者は7人。それが本当に面白くなるの?
この映画の面白い所はまさにここからで、極限状態に追い込まれた人間がどんな事をするのかってのを酷な程描いているんだよね。
正義感を振りかざすもの。人を蹴落としてでも生き延びようとするもの。人に助けられないと生きられないもの。人に利用されるもの。利用するもの。
あー。確かに同じ状況でも人それぞれ対応は違うね。
様々なタイプの人間が集まっているけど、みんな考えている事は一つ。
ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン!みたいな!?こういう時こそ助け合わなきゃね。
なぜ閉じ込められているのか訳も分からず死にたくないし、死ぬのもトラップによって一瞬だからね。ちょっとしたヘマが死につながる。
しかもそれだけじゃない。トラップだけじゃなく、人間関係によっても殺されてしまうかもしれない。
窮地に陥ったネズミはネコをも噛むって言うからな。普段そんな事しない人間でも、平気で人を殺すこともあるかもしれない。
トラップを避けながらと言ってもこちらにあるのは今着ている服と靴だけ。靴を投げたり服を結んだり、様々な事をしてトラップを回避したけど資源も底をつくと、次に考えるのは他人を犠牲にすることしかない。
…なんてこったい。「悪いのは私じゃないの。この環境なのよ」ってセリフがどこかから聞こえてきそうだ。
そんな風な状況だから、たった今出会ったばかりの人間との関係も考慮しなければならない。まさに極限状態。
ま、そんな感じの内容なんだけど、とにかく場面は一部屋しか出てこない。この映画のタイトル通り、キューブ(CUBE)、つまり立方体の箱部屋が舞台。1辺約4.2mの立方体。
さっき君も言っていたけど、その一つの箱部屋を何色も色分けして、視聴者には何部屋もあるように見せかけているのだけど、これが実に緊迫した怖い雰囲気を生み出している。色による演出がよく出来ててね。
人間って無意識に色から受ける印象があるよね。青は冷たいとか。
そして終始、謎は明らかにならない。そのわけのわからない状況下でトラップを潜り抜けなければならないという常に死と隣り合わせの現状が、人間の精神を崩壊させていく。
赤とか青とか黄色とか緑とか次々に見せられると人間って不安になるんだってさ。それもあるのかな。
極限状態に置かれた人間はどうなるか?ぜひ観て確かめてみてね。個人的にはレブンという眼鏡の女の子が覚醒していて、才女に弱い自分はメロメロだった…。
警察官のクエンティンもいい感じで狂っていくけど、狂った後よりも、まだ微妙に冷静さが残っている時に時折見せる狂気な眼差しの方が怖い…。
あー、警察官も出てくるのか。こういう映画って普段、正義を振りかざしている人の方が悪に染まりやすいよね。演出的にわかりやすいんだろうね、きっと。
これ観たら、警察官ちょっと嫌いになりそうだ。フィクションだけど。妙な正義感は狂気と隣り合わせなんだなぁ…なんて感じちゃうからな。
「正義のための戦いなんてどこにもないのだ、正義はある日突然逆転する、正義は信じがたい」ってアンパンマンの作者も「
わたしが正義について語るなら」で言ってたからね。
アジャラカモクレン、レビューラビュー、テケレッツのパー
映画『キューブ』の批評を終えて
正義のための戦いなんてどこにもないのだ、正義はある日突然逆転する、正義は信じがたい!!…ん?あれ?ここは?あ、ポスターの前か。
あー、今回は『キューブ』推しなんだな。このポスター貼って、次の試写会の会場に行く前に、ささっと限定15杯の特盛エビ塩ラーメン食べに行かなくちゃ!あー。腹が減ってきたなぁ。急がなくっちゃ!!
それにしても、この「映画名作レビュー戦記シネマネオン!」とかいう知らない映画の前売り券を支配人にもらったけど、どうしよう…。一緒に見に行ってくれる人なんていないしなぁ?。
映画『キューブ』の名言・心をざわつかせた言葉
しゃべるな。想像もするな。目の前のことだけを考えろ。
待ってても解決しない。俺は行動で答えを探す。
机はデカいが仕事は小さい。陰謀など無縁だ。
誰もがヒーローにはなれない。
誰も彼もがシステムの一部なんだ。
命が危険になっても人間性は大切よ。
「生きるに値するものが外には何もない」「何があるの?」「人間の果てしない愚かさだ」「それでも生きるわ」
動画視聴で『キューブ』を実況・解説!
- 0:03:50頃
開始早々、これは衝撃的過ぎる…。
- 0:19:50頃
脱獄のプロ、レン。カッコつけた瞬間にこの結末は可哀想だわ…。流石に不謹慎ながらも笑ってしまった。
- 0:27:50頃
警察官クエンティンの目線が怖い…。
- 0:41:30頃
赤い部屋で演説するっていうのがにくい演出だなぁ…。今まで脱力的だったワースの顔が急に力強く見え始める。
- 0:53:45頃
音を立ててはいけないというトラップにドキドキ。こっちまで静寂にならなきゃという気分になってくる。
- 1:01:15頃
クエンティンの顔、こわっ…。この映画中、一番悪い顔の瞬間だわ…。
- 1:02:30頃
レブンが落ち込んで部屋の隅っこに座り込むシーン。このカメラの構図、妙に印象的。
- 1:21:40頃
おい…。マジかよ。そんな事言うなよ…。
- 1:24:00頃
絶望的過ぎる…。持ち上げて落とされるとは…。
- 1:25:25頃
壁に付いた血だけで結末を語る感じね…。うわあぁあ…。
映画『キューブ』のような映画・似てる作品・おすすめ
公開日:2004年1月19日
ジャンル:ホラー映画, ミステリー映画, スリラー映画
監督:ジェームズ・ワン
主演:リー・ワネル, ディナ・メイヤー, ケイリー・エルウィス
2004年の映画『ソウ』か!これも低予算なんだよな。
閉じ込められて逃げ出すと言えば、やっぱりこれでしょう。ただし、『ソウ』のようにはっきりとした説明もないし、支配者もいない。恐怖へのルートが違うので『ソウ』がダメでも『キューブ』はイケる。『キューブ』はダメだけど『ソウ』ならイケるっていう人もいるかもしれない…。
映画レビューまとめ
ども。シネマネオンの中の人、野口明人です。
低予算でもアイディア一つでここまで人の恐怖を駆り立てる事が出来る。ホラー映画って特殊効果とかなくてもいいんだって新しい発見でした。
基本的にホラーは苦手なんですが、これは違った意味で怖さの琴線を攻めてきたので、ある意味大丈夫で、ある意味考えさせられました。…ある意味のオンパレード。
一味違ったホラーが見たければぜひ。
それと冒頭に話をした、この映画の原点となった『Elevated』という短編映画も特典映像に入っていて面白かったです。
20分ほどの内容でこれも始終、個室、エレベーターの中だけで話が進みます。登場人物はキューブにも出てきた人が使われています。
ヴィンチェンゾ・ナタリ監督は空間の使い方がうまいんですね。ひとつの部屋でもこんなホラーが出来るなんて面白いもんです。
ではでは、そんな感じで『キューブ』でした。
ここまで読んでいただき本当にありがとうございました!
野口明人
あ、最後に『キューブ』のレビュー点数です↓
キューブ - 感想・評価
公開日:1997年9月9日
ジャンル:ヒューマンドラマ映画, ホラー映画, ミステリー映画
監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ
主演:ニコール・デ・ボア, モーリス・ディーン・ウィント, デヴィッド・ヒューレット
キューブ
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ストーリー - 63%
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キャラクター - 88%
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演出 - 86%
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映像 - 76%
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音楽 - 54%
73%
映画レビューまとめ
密室脱出物の元祖なんだそうだよ。アイディアに脱帽しつつ、本当に怖いものを見せられてゾッとしてしまった。すげーなこの映画。
User Review
61.22%
(18 votes)