キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャンという映画をご存じでしょうか?2002年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督の映画なのですが、完全にダークホースでした。
もし、あなたとどこかで知り合って映画の話をしたのなら、まず間違いなくこの映画の話をするでしょう。
このサイトでは長いこと、サイドバーに『野口の中で歴代1位の映画はコレ』という項目で『オーロラの彼方へ』を載せていました。
僕の好きなジャンルのタイムリープものであり、父とあまり上手く行かなかった僕の涙腺を刺激する父と子の愛情物語というコンボをかましてくるまさに野口キラーな映画だからです。
…ですが、ついにその不動の地位を揺るがす映画を見つけてしまったのです。
それが今回紹介する『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』なのです。
ジャンルとしては犯罪映画で、主人公が詐欺師なので道徳的な観点から万人が「良い!」と言えるような映画じゃないかもしれません。
しかも悪人を主人公としたピカレスクロマンに共通する「男臭いカッコ良さ」もあまり感じない映画でしょう。
しかし、それらを補ってあまりあるほどの主人公の憎めなさ。
主人公の家族への愛が溢れ出ていて気がつけば泣いていました。しかもこれは『世界をだました男』という自伝小説をもとにした物語らしいのです。
つまり、実話をもとにした映画。この現実世界に、こんな愛があるのです。
ま、冒頭で長いこと語っても仕方がありませんので、映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のレビューの方にまいりましょう。
きっと忘れられない映画になるはず…
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映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』 – ストーリー
公開日:2002年12月25日
ジャンル:伝記映画, 犯罪映画, ヒューマンドラマ映画
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:レオナルド・ディカプリオ, トム・ハンクス, クリストファー・ウォーケン
立派な父と美人の母。家族が大好きだった16歳のフランクは突然両親の離婚を告げられる。誕生日の日に父からもらった小切手を手に家出をし、国税局から奪われたものを取り返そうと映画を観たり実際の職業を観察しパイロットや医師、弁護士になりきる。彼は“身分の信用”と“勤勉さ”を武器に小切手偽造で次々と現金を手に入れる。彼を追うFBIのカールと追い詰められていく若き天才詐欺師フランクの追走劇…
もし、あなたにケーキ屋さんで『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』ってどんな映画?あらすじとか評判は?と聞かれたなら…
この映画は一言で言えば、“愛すべき詐欺師の映画”なんだ。
もちろん詐欺は犯罪で詐欺被害にあった人の事を考えると大きな声で賞賛は出来ないのだけれど。
実在するフランク・W・アバグネイル・Jrという人の『
世界をだました男』という自叙伝が元ネタで、その内容とはちょっと違う部分も盛り込まれているから一応スティーブン・スピルバーグが作った“作品”という事で評価してもらいたい。
彼が16歳のフランクを演じ、それを追いかけるFBI捜査官カールをトム・ハンクスが演じる。
タイトルの『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』は日本語に訳すと「鬼さんこちら」って意味で、イメージ的にはルパン三世と銭形警部を想像出来るけど、あんな感じを求めちゃうとちょっと違うかもしれないね。
オープニングアニメーションはそれっぽく仕上がってるんだけどさ。
さっきも言ったけど、これは実在するフランク・W・アバグネイル・Jrというアメリカ人、20世紀最大の詐欺師とも名高い男の話。レオナルド・ディカプリオが演じている。
彼の父親は裕福で政治などの世界にも精通しているフランクの手本となるほど立派に見える人間。
そして母親はフランス人で誰もが羨むほどの美人。
父と母がダンスを踊る姿などを微笑ましく眺め、フランクは幸せを感じていた。
父親は国税局から脱税の容疑をかけられ、みるみるうちに転落していく。
母親は父親の知り合いと密かに会うようになり、フランクは突然両親の離婚を突きつけられた。
驚いたフランクは誕生日に父からもらった小切手を片手に家出をする。
はじめは寝どころを確保する為に小切手を切った。
しかしすぐに不当りを出し使えなくなってしまう。
16歳の自分では信用もない為、小切手の誕生日の数字を削り26歳だと偽った。
不当りが出ては名前を捏造し新しい銀行の口座を開き小切手を切る。
その方法も行き詰まっていた頃、フランクは飛行機のパイロットが尊敬の眼差しでみんなから見られている所を見かける。
学校新聞の記者と偽り、航空会社を取材し徹底的にパイロットについて調べ上げる。
飛行ルート、年収、勤務日程、パイロット用語、身分証明書。知ることが出来ることなら何でも頭に叩き込んだ。
そして購買部に電話をかけ副操縦士だと偽り制服を手に入れる。完璧なパイロットの出来上がり。
制服に身を包んだフランクは誰も羨ましそうな眼差しで見つめる。
過去に断られた銀行でさえパイロットの制服さえ着ていれば小切手を切ってくれる。
自信を手に入れたフランクは自分で作り上げた精巧な航空会社の小切手と巧みな話術によって小切手を現金に変えていく。
本物のパイロットと話をしても叩き込んだ知識でなんとか乗り越えていく。誰も怪しんだりしない。
大金を手に入れたフランクは父親にパイロットになったと手紙を送り同時に無料航空券などを送付し母親と父親の仲を取り戻そうと努力する。
その傍ら女性を口説いては情報を手に入れ更なる精密な小切手を作り上げる。
徐々にその被害は大きくなりFBIでも目をつけるものが出てきた。それがトム・ハンクス演じるカール・ハンラティだ。
小切手偽造などまだ誰も注目していない頃、その手の犯罪のスペシャリストだったカールは周りに笑われながらもフランクが行っている小切手偽造が大変な事になると予測していた。
カールのマジメな捜査にもFBI全体がまともに取り合わない間にフランクはせっせと小切手を作り出しその被害総額は130万ドル。
カールは一度フランクが小切手を偽造しているホテルを捜し出し、フランクと対面するがフランクはその窮地も秘密検察局のものだと嘘をついて切り抜ける。
カールは顔を見ている。しかし指紋や前科者を洗ってもヒットしない。なぜだ。
カールはひょんな事からフランクが使っている偽名が漫画の登場人物の名前だという事を知り、捜査対象を家出の未成年に切り替えた。
未成年だからデータにないのだ。そしてフランクの母に当たり卒業アルバムからフランクの正体を知る。
一方フランクは大金を稼ぎながらも孤独を感じ、クリスマス・イヴにカールに電話をかける。
追う者追われる者。カールがフランクに近づけばフランクは身分を変えカールの前から消えて行く。
医者や弁護士など事前に調べ上げ勉強し、完璧にこなす。
本当の事をすべてぶちまけて普通の生活に戻りたい。父親と母親が楽しそうにダンスを踊っていた頃のように家族で幸せに暮らしたいだけなのだ。家族が温かくクリスマス・イヴを祝えたら。
フランクは何度も足を洗おうとするが…。
…説明上少々映画の流れを前後させてしまった所もあるけど、まぁこれが半分ぐらいのあらすじ。調べたらどうなったかとかラストがどうなるかってのはわかるから話をしてもいいんだけど、実際に観たほうが面白いと思うから触れないでおくね。
実話を元にした話ではあるけど、スティーブン・スピルバーグが書き換えている所も多分にある。
たとえば、カールなんて捜査官は実話にはいなくて、フランクの事を追いかけ、フランクに手を差し伸べた複数の人をあわせて作り上げた想像の人物だったり。
フランクが離婚の話を聞いて家出をしたのはびっくりして飛び出したって感じになっているけど、実話では父親の顔を見たくなかったからだとか。
でもそうなると僕がこの映画を観て、うわー!ここいいな!って思った事は全部なくなっちゃうわけで、そう考えるとスティーブン・スピルバーグの作り上げたこの作品のテーマは素晴らしいなーって感じだね。
レビューとかを観ると「これが実話だとは驚きです」的なものと「素晴らしいのになぜフィクションではなくノンフィクションなのだ。作り物だったら良かったのに」的なもののように“実話”というオプションが評価を左右している感じがするね。
ただ、これがさ『E.T.』みたいな完全創作の作品だとしても、すげーいい映画だと思うんだ。
ある種ドストエフスキーの『罪と罰』を感じさせるようなフランクの心情の揺れ、その時のレオナルド・ディカプリオの表情とか、カールの温かさとかフランクの家族想いなところとか、父親のフランクに対する愛情とか、登場人物がものすごく魅力的なんだよ。
そしてその登場人物が何気なくとる行動が印象的で頭に残る。
カールがエクレア食べる姿とか、きっと10年後でも覚えているシーンだと思う。
コインランドリーで縮んだ赤いセーターをお婆ちゃんにぶん取られるシーンとか、フランクが婚約者の家族が楽しそうに歌っている姿を微笑ましくちょっと悲しげに見ているシーンとか。
自分を逮捕しにきたカールを嬉しそうに喜ぶ顔とか。
特に画面切り替わる瞬間の顔にすげー気を使っている気がする。
様々なシーンの積み重ねでそれぞれのキャラクターの魅力がグッと増している。
そういう細かい動作とかはさ、きっと自叙伝には載っていなかっただろうし、スピルバーグやるじゃん!って感じなんだよね。
だからこの映画は実話だから良いのではなく、創作だから良い!と言いたい。
実話であるというのは観終わった後にマジかよ!こんなすげー人いたのか!とビックリするためのスパイス的なもの。
もちろん、映画より本の方が面白い!っていう意見もあるから、原作を読むの楽しみ。この映画観終わってすぐに注文した。
まさにドンピシャなんだわ。ジャズな部分とディズニー的な部分と、クラシックなところと。
きっと人ってその時の感情によって聴きたい音楽って変わってくると思う。
ロック聴きたい気分とか、メタル聴きたい気分とか、アニソン聴きたい気分とか色々あるじゃん。
この映画を観ている時にも感情が行ったり来たりすると思うけど、まさにこの気分の時に聴きたい音楽はこれだ!っていうのをビターーーーっ!とあてがってくれている。
1960年代のヒット作が散りばめられているらしいし、僕的にはイパネマの娘などの曲が使われているのにニンマリしてしまったね。
ま、興味が湧いたらフランク・W・アバグネイル・Jrのことを調べてみると、映画の内容と実際の比較が出来て面白いと思う。
…そんな事を『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』についてエクレアを頬張りながらケーキ屋で話すと思います。
『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』の名言・心をざわつかせた言葉
「名前を書きゃいいんだよ。それですべて片付くから」「どっちの名字を?」「どっちでもいいからサインを。怖がることはない。試験じゃない。落第はない」
パパは「正直者は何も恐れず」と。僕は何も恐れません。家出した僕を心配しないで。僕はパパが失ったものを取り返してみせます。
子供がいりゃ分かるよ。親は子を売ったりせん。
「奴はこの空港を使う」「レンタカーで別の空港へ行くかも」「おれがここにいるからここだ」
「外国で逮捕できるもんか」「逃がすんですか?」「あきらめるんだよ」
いいね。嘘をつき続けろ。そのうち嘘が本当になるぜ。
『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』は↓こんな作品や世界観が好きなあなたにおすすめ。この映画を観ている時にパッと思い浮かんだ映画・小説・漫画・アニメ・テレビドラマ、または音楽など
著者:ドストエフスキー
翻訳:工藤精一郎
出版:新潮社
ページ数:956ページ(上下巻)
似てる似てないはあくまでも個人的な意見ですが、やはりこの映画を観て感じたのはドストエフスキーの罪と罰的な所。
制作:Production I.G
放送期間:2012年10月11日 – 2013年3月21日
話数:全22話
またラストの展開はアニメPSYCHO-PASSのシビュラシステムの“それ”です。ここに挙げた2つは世界観がバラバラな気もするので、良いところ取りだと思ってください。
『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のような映画が好きなあなたに、ぜひ次に観て欲しい映画はズバリ…
公開日:2013年12月25日
ジャンル:伝記映画, コメディ映画, 犯罪映画
監督:マーティン・スコセッシ
出演:レオナルド・ディカプリオ, ジョナ・ヒル, マーゴット・ロビー
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』も実在した犯罪者をレオナルド・ディカプリオが演じるというもの。こっちはドラッグやら女遊びやらなどのダークサイドな部分が多く描かれているので『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』とは雰囲気も全く違いますが、同じような題材で撮った映画でも演出が違うとこうも違うものかというのを比較してみると面白いはずです。主人公の好感度もかなり違いました。監督はマーティン・スコセッシ!
映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』 – 映画
さて、僕の歴代1位である『オーロラの彼方へ』の地位を揺るがすような映画という事でなかなかに賞賛してしまいましたが、もちろん不満点がないわけではありません。
この物語の冒頭のテレビ出演するシーンとか、途中やラストで絡んでくるのかな?って思ったら投げっぱなしだったり。
『オーロラの彼方へ』は伏線をすべて回収して最後にバチーンとハマる感じが好きなのでそういう点で言うと、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』はラストが見事だった!とはなりません。
ただラストの展開を観て、心底良かった。本当に良かったね。ってホッとして終わるので僕はこういうラストも好きです。
何度も観たくなる映画だと思いますね。温かい作品です。
しかしこの映画で行われていた事を16歳から21歳というむちゃくちゃ若い年齢で実行していたとは正直驚きです。
この映画の中では映画を観て勉強しているシーンでサラッと片付けられていますが、相当な努力家であったことと、恐るべき観察眼があったことがそれを可能にしていたんでしょう。
主人公の行いをどうしても憎むことが出来ないのは、詐欺師をするにいたった理由と、それを成し遂げる努力が垣間見る事、そして家族に対する愛が溢れているからでしょう。
この主人公、かっこいいな!っていう感じではなく、危うい存在を心配そうに見つめる親目線で主人公をみてしまう。
若い主人公を演じたレオナルド・ディカプリオの演技も光ってます。フランクは16歳のときに26歳を演じましたが、ディカプリオは27歳ぐらいで16歳を演じたわけです。
レオナルド・ディカプリオ、トム・ハンクス、スティーブン・スピルバーグ。これだけ揃えばそりゃー面白いだろという所に、さらに脇役を名優で固める。
そしてそれをムダにしない魅力たっぷりな題材。ハラハラしつつ、はらりはらりと切り抜けていくさま。
ぜひみていただきたい。ハードルをあげすぎた感もないわけではありませんが、それだけダークホースだったのです。
期待もせずに観てみたらすごいものにぶち当たったという振り幅がすごかった。
ですので、ここまで書いておいてあれですが、出来れば期待せずに御覧くださいませ。
ではでは『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』でした。
…あ、ちなみに、この映画クリスマスがちょこちょこ出てきますが、アメリカでの公開日もクリスマスです。
キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン - 感想・評価
公開日:2002年12月25日
ジャンル:伝記映画, 犯罪映画, ヒューマンドラマ映画
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:レオナルド・ディカプリオ, トム・ハンクス, クリストファー・ウォーケン
キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン
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ストーリー - 90%
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キャラクター - 95%
-
演出 - 80%
-
映像 - 90%
-
音楽 - 95%
90%
映画レビューまとめ
演出に点をつけるのが難しかった。色々と凝っている演出もあるのに、雑な演出もある。それでも、おおお!と思わせてくれる所が多いためこんな感じの点にしました。本当は全体的にもうちょっと点数をあげてもいいかなって思いましたが、僕の趣味補正がかかってきてしまうので、出来る限り冷静な感じで点数をつけたつもりです。父子の物語が好きな人は是非見てください。それと画面が切り替わる瞬間の表情も是非注目してみると面白いと思います。