この自由な世界でという映画をご存じでしょうか?2007年のイギリスの映画なのですが、ヴェネツィア国際映画祭で脚本賞を受賞しているのです。
ではその話はどんな内容なのかと言いますと、取り扱っているテーマは移民問題です。
シングルマザーの主人公が、労働者斡旋の会社を立ち上げます。子供と暮らすためにね。
彼女は必死に努力をして軌道に乗せようと頑張っている時に「不法移民を働かせた方が儲かる」ことを知ってしまうんです。
さて、そんな彼女の結末はどうなってしまうのか。
映画『この自由な世界で』という魅力的なタイトルの意味するものは…。それではレビューしていくことにしましょう。
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映画『この自由な世界で』 – ストーリー
公開日:2007年09月01日
ジャンル:ヒューマンドラマ映画
監督:ケン・ローチ
出演:カーストン・ウェアリング, ジュリエット・エリス, レズワフ・ジュリック
ネタバレ注意『この自由な世界で』のあらすじまとめ
シングルマザーであるアンジーは、息子のジェイミーを自分の両親に預け、いつか一緒に暮らせるようにと職業紹介所で一生懸命働いていた。
しかし、飲みの席での同僚のセクハラに腹を立て、水を浴びせかけると次の日には成績が良いにも関わらずクビになってしまった。
色々な職業を転々としてきたが、もう誰かの下で働くのなんてうんざりだと考えたアンジーは友人のローズとカフェで働くアンディを誘って、自分の職業紹介所を立ち上げようと提案する。
現実思考のローズは免許も契約も銀行口座も事務所でさえないのに無理だと反対するが、アンジーはカフェの裏の空き地を借り、バイクひとつで契約を取り、外国人労働者達に仕事を探していないかと宣伝して周った。
そのおかげでカフェの裏の空き地にはたくさんの労働者達が集まり、アンジーの職業紹介所は順調に始動することが出来た。
しかし、実際はローンや税金の支払いなどなどで資金繰りが難しい。そんな時、不法移民を内緒で働かせるほうが儲けが出ることを知り合いから教えてもらう。国外追放を恐れる彼らは、通常よりはるかに安い給料でよく働くのだ。しかも、劣悪な環境でも文句も言わないため、いくらでもピンはねし放題。
実際に過去にこの方法で儲けたマフィアがいたらしいが、そのマフィアも警察に見つかってもただの警告を受けただけ。マフィアが警告で済むのであれば、哀れなシングルマザーには何もしてこないだろうという自分理論を繰り広げ、反対していたローズも説得する。
しかし、アンジーにも後ろめたい気持ちがないわけではない。少しの間だけ。ローンを返済する少しの間だけと自分を言い聞かせるが、実際は次の新しい事務所を借りるまで…、次の、次の…と、あと少しだけとズルズル悪の道へ進んでいってしまう。
そんな彼女の職業紹介所は仕事先での賃金の不払いが発生して、彼女の前に暗雲が立ち込めはじめる。道を歩いていると男にボコボコにされ、事務所として使っていたアパートには石を投げ込まれ、友人のローズもアンジーにはついていくことが出来ず、ケンカ別れをし、最後には息子のジェイミーを誘拐されるまで発展してしまう。
ジェイミーは無事帰ってきたが、今までピンはねして稼いでいたお金は誘拐犯に奪われる始末。しかしそれでも、アンジーは国を変え働くしかなかったのであった…。
『この自由な世界で』の名言
絶対に”オッパイが世界を制する”
『この自由な世界で』のおすすめポイント
リアル過ぎる社会派の映画。
一人の女性が成功するまでを語った映画かと思ったら…
この映画、後味がすごい悪いです。一人の女性が会社を立ち上げ、少しは悪の道に手を染めてまでも成功していくサクセスストーリーかと思えば、ギャンブルにはまり抜け出せない人間の末路のごとく、あと少し、あと少しと悪の道から抜け出せず最後にはひどい仕打ちを受けます。
しかし、それでも彼女には働くことしか残っていない。そんな感じのラストなんですが、思っていたものと全くの真逆のラストだったので、度肝を抜かれました。
映画じゃないんだから、そんなに人生上手くいかないよねっていうリアルを大事にしている映画なんでしょうが、それがAmazonやブログなどで高評価を得ている理由みたいです。
第64回ヴェネツィア国際映画祭で金オッゼラ賞を受賞した作品みたいですし。オッゼラ!
ただ、僕は映画にはある種の希望を見出せる系の方が好きなんですよね。そんなん知らんがなって感じなんですが、映画を観終わった後の絶望感より、見終わった後の爽快感を求めて映画を観てしまっているので、あまりに可愛そうで仕方がありませんでした。
…といいつつ、この映画の主人公にはあまり共感出来る部分が少ないダメ人間なんですけどね。ドツボにハマって行く人間そのものなので、もしかしたら同属嫌悪ってやつかもしれませんが。
息子と幸せに暮らしたいだけだったのに、最後にはそれと真逆の結果になってしまう。ギャンブルやる人ってこういう心理ですよね。ちょっとお金が増えたらいいかなっていう気持ちではじめたのに、気がつけば多額の借金を負ってしまっているみたいな。
そういう人間心理を上手く表現した映画だとは思いますが、観ていると非常に心苦しくなります。
映画『この自由な世界で』 – まとめ
リアリティにあふれていて、現実社会の負の部分を如実に映し出した映画。
もう結構世の中がひどいことになっているのは知っているから、そこからどうすれば抜け出そうという気力が起きるのか。そういうのを示してくれる映画の方が個人的には好きですが、たまにはこういうのもね。
はい。
…あ、個人的には、”絶対にオッパイが世界を制する”が頭から離れません。離れないんです、オッパイが。
なのでとりあえず心苦しさはオッパイに救われた感じがします。
ではでは、『この自由な世界で』でした。
この自由な世界で - 感想・評価
公開日:2007年09月01日
ジャンル:ヒューマンドラマ映画
監督:ケン・ローチ
出演:カーストン・ウェアリング, ジュリエット・エリス, レズワフ・ジュリック