この森で、天使はバスを降りたという映画をご存じでしょうか?美しいタイトルの映画ですよね。
この映画は、自主映画を対象としたサンダンス映画祭で1996年に観客賞を受賞し話題になった映画です。監督は海外ドラマ『マクガイバー』のプロデューサーとして知られているリー・デヴィッド・ズロトフ。
ちなみにサンダンス映画祭はクエンティン・タランティーノ監督やホラー映画の『ソウ』、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』などを有名にするなど、ある種掘り出し物を発掘するには最適な映画祭。
そこで『この森で、天使はバスを降りた』は賞を受賞したわけですし、いろいろなところで泣けるという声を聴いていたし、何よりもタイトルが美しいので、期待して観てみたのです。
…結果。
たとえば、これはそう。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を見た時のような何ともいたたまれない気持ち。どうにも後味の悪い記憶を刻む経験。
正直、誰かにオススメしたい映画ではありませんでした。いい意味で。
そんな映画『この森で、天使はバスを降りた』のあらすじと感想を書いていきたいと思います。
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映画『この森で、天使はバスを降りた』 – ストーリー
公開日:1996年01月24日
ジャンル:ヒューマンドラマ映画
監督:リー・デヴィッド・ズロトフ
出演:アリソン・エリオット, エレン・バースティン, マーシャ・ゲイ・ハーデン
ネタバレ注意『この森で、天使はバスを降りた』のあらすじまとめ
パーシー・タルボットは刑務所の中で熱心に観光局の仕事をし、無事に刑期を終えた。彼女は出所時、自分の部屋の壁に貼られた様々な風景写真をしみじみと眺め、そのうちの何枚かを持って出た。
彼女は自分の生まれた故郷には帰らず、森に囲まれた小さな町で人生の再出発をすることに決める。地元の保安官に頼み、働き場所と宿となるスピットファイア・グリルというカフェを紹介してもらう。
そこの女主人、ハナは口が悪く無愛想だが心優しい。カフェで働くようになったパーシーに対し、その店の客はよそ者に対する猜疑心から冷たい扱いをしていたが、ハナは特にそのようなことはしなかった。パーシーの過去の事も深く聞かず、ただ淡々と仕事の指示をする。
ハナはそれまでそのカフェを一人で切り盛りしていたのだが、だいぶ年も取り、腰も悪かった。そしてある日、椅子から転倒し、寝たきりになってしまう。
今までファーストフードでしか育ってこなかったパーシーは料理はろくに出来ない。そんな中、ハナの甥の嫁、シェルビーが助っ人に来てくれる。彼女の夫は他の客と同様にパーシーの過去に疑いの目を向けていたが、シェルビーはハナと同様、親切にパーシーに接してくれた。
ハナが働けない間、パーシーとシェルビーは二人で上手く経営していたが、パーシーはスピットファイア・グリルが売り店舗になっていることに気付く。シェルビーに詳しい事情を聞き、何年もこの店に売り手が現れない事を聞くと、パーシーは作文コンテストを提案する。
アメリカ中から参加費100ドルでこのお店の貰い手を募集し、一番素晴らしかった作文を書いた人に譲るというコンペで、参加費全額はハナの手に渡る。たった100ドルでお店がもらえるのだから多くの人が参加する素晴らしいアイディアだった。
作文コンテストはパーシーのつてでアメリカ中の新聞の広告に載り、数日後想像以上の手紙が届く。ハナ一人ではとても読み切れず、シェルビーとパーシーも採点を手伝ったがそれでも手が回り切らない。
やがて町全体で手分けして作文の採点をすることになり、町はある種の祭り状態になった。
そのころにはパーシーはある程度町に溶け込んでいたが、ハナの甥であるネイハムだけは常にパーシーに疑いの目を向けていた。町の人気者になりつつあったパーシーの狙いはハナの手元に入った大量の参加費にあると睨み、盗まれる前に隠そうとハナの店に忍び込む。
ネイハムは金庫から大金を抜き取り、そばにあった麻袋の中に詰め込んでいる時、パーシーは毎日の日課をしにやってきた。とっさに隠れたネイハム。パーシーはネイハムに気づかず、麻袋を手に取りその中に缶詰を詰め込んでハナに言われていた通りに外に置いた。
翌日、ハナは金庫にあるはずの大金がなくなっている事に気が付き、警察に連絡する。そしてタイミングの悪いことに前日にハナとケンカをしてしまったパーシーはハナの前から姿を消していた。
パーシーがお金を盗んで逃亡したと町中に口コミが広がり、警察が探し回る。シェルビーは以前、一人になりたい時があったらここにきていいわよと自分が教えた場所でパーシーを発見し、パーシーの悲しい過去を聞く。
パーシーがやったのではないと確信したシェルビーであったが、警察が到着し何が起きているのか理解できずにパーシーはそのまま警察に連行されてしまった。
パーシーは一体どうなってしまうのであろうか…。
…以上、大事な部分は端折りましたがおおまかなあらすじはこんな感じです。
この映画の評価の分かれ目はやっぱりラストシーンにある
ネタバレしちゃうと面白くなくなっちゃうので、あまり深く触れませんが、要は、ハナの甥であるネイハムが本当にクソ野郎なわけです。このクソ野郎の勝手な猜疑心のせいで、パーシーの人生が上手くいき始めた頃にすべてを奪います。
このネイハムは奥さんのシェルビーの事も頭が悪い女としてバカにしているし、人として最低な人間なのです。
この最低な人間というのはある意味、映画の中にはなくてはならない存在です。ヒーローは悪役がいるから輝きます。そしてどれだけピンチになってもヒーローは最後に悪役を倒してくれるのです。
…でも、この映画はこのクソ野郎がクソ野郎のまま終わります。勝手な思い込みでパーシーをどん底に落としたのに、ごめん、俺はなにもわかっていませんでした。という一言の謝罪だけで、何の罰も受けず何事もなかったかのように暮らして行くのです。
す、すっきりしねーーーーえええーーぇ…。
このラストがもう少し、ネイハムにとって罰的な結末であれば、こんなに後味悪い感じではなかったんですが、どうにもこうにもダンサー・イン・ザ・ダークのごとく、何もしていないものが罰せられ、悪者は生き残る映画でした。
とても後味の悪い映画なので、とてもすべての人のおすすめできる映画ではないのです。
…いい意味で。
映画『この森で、天使はバスを降りた』 – まとめ
この映画の原題は「The Spitfire Grill」です。お店の名前がそのまま映画のタイトルになっているわけですが、なぜか「この森で、天使はバスを降りた」というファンタジーチックな邦題に変えちゃいました。
美しいタイトルに惹かれて手に取ったわけですから、邦題を付けた側からすれば正解でしょう。
でも映画って結構、タイトルから連想されるイメージで第一印象決まっちゃう所ありませんか?
この映画はその第一印象からは全く想像出来ない内容の映画なのです。
全然ファンタジーじゃないし、なんだったら、天使と言わなくていいのでは?という誇大広告感ハンパないのです。ひとりの女性が町に来て、町の雰囲気が良くなったという所から天使という単語にしているのでしょうけど、ハートウォーミングな映画では決してありません。
かなーり、観終わった後悲しい気持ちになります。いい映画なんですけど、悲しいんです。
あぁ。なぜ人間とはこうなのか。
まだこのサイトには感想書いていませんが、『ドッグヴィル』という映画にも通じるものがありますね。やっぱりよそ者には人間冷たいんですよ。
彼女の存在が、町全体としてはなかったことに思えてしまうラストがどうにも…。
そういう感想でした。途中までは謎を含んだ不思議な世界観で楽しい気持ちで観ていたんですけどね。彼女の犯罪歴がなんなのかとかね。ラストで落とされますよ。
持ち上げて落とす系の映画が大好きならば、『この森で、天使はバスを降りた』をおすすめします。決して悪い映画ではありませんので。僕は泣きました。悲しくて。
はい。
ではでは、今日はこんな感じでした。
この森で、天使はバスを降りた - 感想・評価
公開日:1996年01月24日
ジャンル:ヒューマンドラマ映画
監督:リー・デヴィッド・ズロトフ
出演:アリソン・エリオット, エレン・バースティン, マーシャ・ゲイ・ハーデン